食における「言語聴覚士」の役割とは?
リハビリでは食も大事
「言語聴覚士」は患者さんの心のケアを意識した声かけから、体の動きと脳の認知を効果的に結びつけるなどさまざまな対応が求められます。
近年、重要性が高まっているのが「食」です。きちんと栄養をとらなければエネルギーが不足し、リハビリの効果を最大限発揮することができません。特に高齢者は飲み込む力(嚥下機能)が低下しやすい傾向にあります。嚥下機能が低下すると食べ物や飲み物が気管に入ってしまう(誤嚥)ことがあります。誤嚥はムセるだけでなく肺炎(誤嚥性肺炎)の原因にもなるので、嚥下機能を保つことは健康な毎日を過ごすための重要な基盤といえます。
歯磨きが肺炎予防に?
誤嚥性肺炎の原因は飲食物だけではありません。口の中には多くの雑菌があり、悪さをする菌を含んだ自分の唾液を誤嚥することで肺炎を発症することがあります。そこで、言語聴覚士は患者さんに合わせた口腔ケアや指導を行います。身近で効果的な口腔ケアが「歯磨き」です。歯ブラシだけでは6割程度しか歯垢を除去できませんが、歯間ブラシを追加すると9割程度まで減らすことができます。他にも口や喉の筋肉を鍛える運動、咳をする力を養うための呼吸トレーニングなども指導します。
超音波エコーで食べる運動を可視化
食事中、口の中や喉のどこに食べ物があるのか、うまく飲み込めているかなどは外からは見えません。嚥下運動を可視化するためにはレントゲンを用いて観察することができます。しかし、レントゲンには放射線の被曝リスクがあります。そこで開発されたのが超音波エコーを使った嚥下運動の観察です。
食べ物を飲み込むためには、正しく嚥下運動をしなければなりません。人がなにかを飲み込もうとすると、のどぼとけの上にある舌骨(ぜっこつ)が動きます。しかし、嚥下障がいがあると舌骨を動かす筋肉の運動が小さくなります。舌骨を動かす筋肉の運動を超音波エコーで観察することで、嚥下障がいのリスクやリハビリの効果測定ができ、より効果的な嚥下運動の支援につなげることができるのです。
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先生情報 / 大学情報
関西福祉科学大学 保健医療学部 リハビリテーション学科 言語聴覚学専攻 講師 松尾 貴央 先生
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