寄り添い、その人らしさを取り戻してもらう「作業療法」
「作業療法」とは?
私たちは、毎日当たり前のように料理を作って食べたり、買い物をしたりしています。作業療法は、そんな何気ない日常的な作業を不自由なく行えるように、病気やけが、障がいなどで日常生活が困難な人に寄り添い、その人らしく暮らせるようサポートします。「自分の力で生活」し、「好きだったことを楽しむ」ことで、その人本来のモチベーションを引き出すような働きかけをしていくのです。
けがや病気でなくても、人は家族を亡くすなど大きな喪失を経験すると、眠れなかったり、食べても味がしなかったり、体調が悪くなったりします。そんな時、当たり前の日常生活がその人を支えてくれることがあります。「何もやる気にならないけど、ちょっと動いてみたら少し元気になってきた」というような経験は誰にでもあるでしょう。
得意な分野の作業をすることで元気に
東日本大震災で経営していた工場と家を失い、ひきこもってしまった男性がいました。作業療法士が訪問して話しかけてもあまり多くを語らないのですが、家族の話などから手先が器用だということがわかりました。そこで、折り込みチラシでかごを作るチラシクラフトを勧めてみました。すると、とてもきれいな作品を作り上げたのです。そして次第に、「こうするときれいに仕上がるよ」、などさまざまなことを教えてくれるようになりました。一緒に作品を作るうちに、自分の気持ちも話すようになり、作品を外に展示しようという意欲が出てきました。やがて、周囲の人たちとの交流も始まったのです。
患者さんにとって大切なことを探す
また、精神的な病気で入院し、そのまま家族以外とは会えない状態になってしまった高校生は、かつて演奏していた楽器にもう一度取り組むことで、少しずつ元気を取り戻していきました。
ものづくりや、音楽など、誰にでも好きなことや夢中になれることがあります。対話しながら、その人にとって意味のある作業を考え、日常生活を取り戻してもらうのが、作業療法なのです。
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先生情報 / 大学情報
東北文化学園大学 医療福祉学部 リハビリテーション学科 作業療法学専攻 教授 香山 明美 先生
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