より効果的な作業を考えるのに役立つ「プレイバックシアター」

より効果的な作業を考えるのに役立つ「プレイバックシアター」

学べることが多い即興劇

1970年代に開発されて、現在60以上の国や地域で実践されている、「プレイバックシアター」という即興劇があります。語り手(テラー)が日常における自らの経験を語り、その話を即興で演じ手(アクター)らが演じる計10分ほどの演劇です。テラーは自らを客観的に振り返ることができる、アクターは他者の立場に立つことができるなど、学べることは多く、自分に新しい視点や気づきをもたらせてくれます。そのため特定の目的ではなく、保健・医療・福祉、教育、企業研修など、さまざまな分野で活用が進められています。

自発性と創造性が身につく

プレイバックシアターは、作業療法士の育成にも役立てられています。例えば、授業で作業療法士をめざす学生たちがテラーとアクターになってプレイバックシアターに取り組むのです。作業療法士は、障害者や認知症などの患者が日常生活活動や、したいことを支障なく行うにはどうしたらよいか考えて支援する専門職です。ここに即興劇がどう役立つかといえば、アクターとして自分で感じて考え、どう演じるか決める中で「自発性と創造性」が身につくのです。作業療法士に求められる「患者にとってよりよい作業を自発的に考えて実践する力」がつくというわけです。
また、ある学生はアクターを務めたことで、「同じ作業でも、それを行う人によって意味が違うことが理解できた」と感じています。作業療法において患者それぞれに必要な作業は異なりますが、その理解につながったことが伺えます。

ストーリーとして作業を理解する

もう一つ、日常を演じることが作業療法士に役立つ大事な点があります。日常には「いつ・どこで・だれが・何を・どのように行い、どうなったか」というストーリーがあることを理解できることです。患者に必要な作業を考える際、「何をするか」と作業のみを切り取るのではなく、状況や結果という日常のストーリーを想定することで、より効果的な作業を考え、行える可能性が生まれるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

県立広島大学 保健福祉学部 保健福祉学科 作業療法学コース 教授 吉川 ひろみ 先生

県立広島大学 保健福祉学部 保健福祉学科 作業療法学コース 教授 吉川 ひろみ 先生

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作業科学、作業療法学

先生が目指すSDGs

メッセージ

将来を考える際、あなた個人の経験、いわば「パーソナルストーリー」を大切にしてほしいです。何かをしたときの「楽しい」「ワクワクする」という感情の動きは自分を知るためのデータで、ここから学べることはたくさんあります。そうした自分の生の感覚をないがしろにして世間の価値観に影響された将来像を描いても、自分に向いていなければ楽しくありません。ありのままの自分からどう成長するかを自らの感覚に教えてもらって進めば、好きなことや得意なことが「できる人」になるのだと思います。

先生への質問

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県立広島大学は、教育、研究、地域貢献、国際交流のいずれにおいても公立大学として一級の大学になっています。「主体的に考え、行動し、地域社会で活躍できる実践力のある人材の育成」を目標に、教養教育では、大学4年間の学士課程教育を通じて実施する「全学共通教育科目」を設定するとともに、専門教育においては、教養教育との連携を図りながら、「専門科目」を系統的に設定することにより、バランスのとれた教育内容を提供していきます。