外国人技能実習生から見えてくる寒冷地農業の未来
技能習得より「出稼ぎ」感覚
労働力不足により、日本の農村で働く外国人技能実習生が増えています。現在、最も多いのはベトナム人です。ベトナムでは大学を卒業しても就職先が少なく、農村での平均月収も3万円ほどです。日本で実習すると月15万円程度の収入になることから、出稼ぎ先として魅力的なのです。単純作業が中心のため挨拶程度の日本語しか話せなくても大きな問題にはなりませんし、短期雇用が多いため、あまり難しい作業を教えられないというのもあります。そもそも日本とベトナムでは気候が違い過ぎて、学んだ農業の技能を生かしにくいのです。
長期雇用できない理由
青森のように積雪のある地域では冬季に農業ができないため、どうしても短期雇用が中心になります。実習先の候補の中には通年で農業ができる温暖な地域もあるわけで、できればそういう場所で働きたいというのが技能実習生の本音です。人手が最も必要なのは収穫時期なので、愛媛のミカン農家と青森の野菜農家がそれぞれ繁忙期だけ雇用するという形も取られていたりします。ただし、それができるのは各地にコネがある監理団体に限られており、広く一般にというのは難しいところです。
寒冷地農業の未来
現行の技能実習制度では、一度決定した実習先を変えることができません。外国人の長期雇用を見据えるなら、このような制度を転換していく必要がありますが、そうすると通年で農業ができる温暖な地域に実習生が集中し、青森県のような寒冷地にはあまり来てくれないでしょう。より高い賃金を提供すれば実習生は来てくれるかもしれませんが、そのためにはより儲かる農業を行う必要があります。人口が減少して国内農産物需要の拡大が見込めない現状を考えると、農産物の輸出を拡大していくことが重要です。日本とは環境の異なる国では食文化も異なるので、すしやラーメンといった日本の食文化と一緒に農産物を輸出するような工夫が必要になってくるでしょう。
参考資料
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弘前大学 農学生命科学部 国際園芸農学科 准教授 佐藤 孝宏 先生
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