海岸から生まれる循環型社会
波の力で発電
海に囲まれた島国であるわが国は、あちこちの海岸に大小さまざまな波が打ち寄せています。波にはエネルギーがあり、その力で発電する波力発電の開発がわが国では1970年代から続けられています。発電効率は20~25%といわれ、工夫をすれば太陽光発電より効率よく電気をつくることができます。
防波堤の一部と組み合わせて設置できるので防災や減災にも役立ち、水素ステーションと併設すれば地球に優しいエネルギーを効率よくつくれます。これが実現すれば、離島での発電が可能になります。離島はエネルギー面で自立できて、本土からの送電のロスも減らせます。
バイオマス発電と生物多様性
海は、川や山とつながっています。海を観るためには、山や川を観ることが必要です。例えば間伐材などの木質バイオマスを利活用をすることで、海や山を守ることができます。
近年は、浜が浸食されて狭くなり、人の生活を脅かして海岸に住む生物に影響を与えています。これは、ある時期に人間が大量に土砂を採取し、川から海に流れ出る土砂量が減ったことなどが要因です。海と川、山はつながっており、それぞれの場所には豊富な生物が生息しています。波は太陽と地球の活動によって起こります。つまり海から、生物の保護や、宇宙、地球といった規模での循環を考えることができます。
実験検証により実現へ
このような研究分野を「海岸工学」といいます。土木工学のひとつであり、土木は人間の暮らしや環境をよくするためにあります。
波の力や、山や川の状況を調べるには、ドローンによる映像を解析して検証します。また、波は海岸や海底の地形、風によって影響されます。それらをまとめた統計データをもとにつくられた実験機器によって、シミュレーターでは得られない、現実に近い波を再現できます。実験的なアプローチによって、循環型社会の実現に向けた研究が進められています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。