資源管理で人間と水産資源との持続的関係を構築する
サンマはなぜ減った?
かつてサンマは安く手に入る身近な魚でしたが、だんだん漁獲量が減っています。これは環境の変化が大きく影響しています。日本は魚を生で食べる習慣があるので、鮮度を保つためにサンマ漁は2日程度以内で往復できる距離で実施されます。そのため日本の近くにサンマの密度が濃い漁場がなければ、安定して漁が行えません。水温と漁獲量の関係を調査した結果、日本近海の水温が上がり、冷たい水を好むサンマが別の場所に移動した可能性があることがわかりました。人間による水産資源の持続的利用には、海洋環境の変動に目を向ける必要があります。
適切な漁獲量を考えるために
水産資源の持続的な利用には、適切な漁獲量も考える必要があります。このときヒントにするのが親の数に対して子がどれくらい生まれるのかを示した「再生産関係」です。漁をしていない場合における親の数を100とし、これを基準に漁が行われているときの親の数を計算し、30を下回らないようにすれば持続的利用が可能とされます。
さらに、魚などの年齢も必要な情報の一つです。年齢ごとの大きさや数がわかれば、一番価値の高くなる大きさに育つ時期を予測したり、再生産関係維持に適した漁獲量を判断できるからです。魚の年齢はうろこや耳石に刻まれた年輪を数えるとわかります。貝の場合は貝殻断面のシマ模様などから判断します。
漁のルール作りへ生かす
漁獲量が極端に減少した水産資源を回復させるために休漁した事例もあります。秋田県でハタハタが獲れなくなったとき、漁業者の判断で漁を3年間控えました。その効果をコンピュータシミュレーションで調べると、一時は減少したハタハタの数が年々回復していることがわかりました。ハタハタにとって適した海洋環境に変化しはじめ、休漁の間にハタハタの子が成長し、親となって数を増やしていたからです。
調査や研究で得られた情報は、漁業従事者や行政機関の意見も取り入れながら漁のルール作りに生かされ、水産資源の持続的利用へと繋がっていくのです。
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先生情報 / 大学情報
東京海洋大学 海洋資源環境学部 海洋環境科学科 教授 鈴木 直樹 先生
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