尿を電気で分離する?! 腎疾患をいち早く見つけ出せ!
体内を安定した環境に保つ重要な臓器
腎臓は、血液をろ過して不要な老廃物や塩分、水分などを体外に排出するという重要な役割を担っている臓器です。腎臓の内部には、毛細血管が球状に丸まっている「糸球体」と呼ばれる組織があり、体内を流れる血液はここでいったんろ過されます。糸球体で血液から分離された尿は「尿細管」という曲がりくねった管を通ります。その際、尿から体に必要な量だけの栄養素やミネラルが抽出され、血管に再び吸収されます。こうしたろ過と再吸収の仕組みによって、人間の体内は常に安定した環境に保たれています。
タンパク質の種類で原因を特定する
腎臓の機能を検査する際、現在は、尿試験紙を使用して尿中のタンパク質の量が基準値より多いかどうかを検査する方法が広く用いられています。しかし、尿試験紙ではプラスかマイナスの判定しかできない上、腎臓に異常がない人でも直前の食事などの影響でプラス判定になってしまう場合があります。
そこで現在注目されているのが、尿に電圧をかけてタンパク質を分離する電気泳動法を用いた検査です。これなら、分離されたタンパク質の種類によって、腎臓のどの部位に異常が生じているかをある程度絞り込むことが可能です。例えば、血液中に含まれるタンパク質が尿に多く出ていれば糸球体に異常がある、尿細管から再吸収されるはずのタンパク質が多く残っていれば尿細管に原因がある、などが推測できるのです。
腎疾患の早期発見へ
電気泳動法を用いた尿検査が、自動分析装置と病態解析ソフトウェアの両方で整備され、一般的な健康診断の際に活用されるようになれば、腎疾患の早期発見につなげることが可能になります。特に、尿細管の疾患は遺伝による場合もあり、子どもの頃から発症する例も少なくないため、こうした尿検査による早期発見は非常に重要です。
将来的に検査の精度がさらに向上すれば、検出可能なタンパク質の種類も増え、どの部位に異常があるか、より細かく特定できるようになるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
埼玉県立大学 保健医療福祉学部 健康開発学科 検査技術科学専攻 准教授 久保田 亮 先生
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