「核医学」で、がんや認知症の治療が変わる

「核医学」で、がんや認知症の治療が変わる

放射性医薬品を体内に入れて病気を発見・治療する

核医学は、放射性医薬品を静脈注射またはカプセル等で体内に投与し、病気の診断や治療を可能とします。甲状腺には「ヨード(ヨウ素)」が集まります。放射性ヨードをカプセルで飲むと、発せられる放射線でヨードの集まり方を画像に撮れるので、甲状腺の異常を診断できます。細胞が生きて元気に機能しているかなどがわかるため「機能・代謝イメージング」とも呼ばれます。
核医学検査にはがんが骨に転移しているかを調べる骨シンチグラフィや、認知症を診断する脳血流シンチグラフィ、全身のがんを見るPET検査などがあり、使用する放射性医薬品によってさまざまな病気の診断や治療が可能です。

診断と治療が一つに

放射線の量を増やしたり放射性医薬品を変えたりすることで、病気を治療していくこともできます。がんは転移した先でも原発がんと同じ性質を持ち、甲状腺がんであれば転移先にもヨードが集まります。そのためがん細胞を狙って放射線を照射するターゲット療法ができるのです。また、治療を始める前やその途中などに画像で細胞の変化を見て、薬の効き方を確認しながら、より個人にあった治療を選択できます。診断(Diagnostics)と治療(Therapeutics)が一つになることを「セラノスティクス(Theranostics)」と言い、核医学におけるセラノスティクスが、これからのがん治療を変えると期待されています。

日本ならではのハードル

日本は被爆国であり、放射線の使用が厳しく制限されています。核医学の新しい診断と治療が認可されることにも時間がかかり、これまでは海外で治療を受ける人もいました。しかし近年、神経内分泌腫瘍の診断と治療が認可される等、日本で受けられる核医学の診断と治療が増えきています。放射線を管理する特別な設備が必要なので、現在は受けられる医療機関が少なく、費用も高額ですが、いずれ注射やカプセルでのがんや認知症、その他の難病の診断と治療が一般的になっていくでしょう。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

駒澤大学 医療健康科学部 診療放射線技術科学科 准教授 平木 仁史 先生

駒澤大学医療健康科学部 診療放射線技術科学科 准教授平木 仁史 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

診療画像技術学、放射線安全管理学

メッセージ

医療の道に進もうと考えているのであれば、大学に入ってからも、レポートに病院実習にと忙しい日々が待っています。卒業してからも油断はできません。医療の発展とともに、10年前は正しくないとされていたことが正しいとされることもありますし、その逆もまたしかりです。放射線については、被ばくのデータを何十年も追跡することで、安全の基準が変わることがあります。最新の知識がなくては、患者さんや共に働く仲間からの信頼を得られません。命に関わる仕事ですから、一生勉強と思って頑張りましょう。

駒澤大学に関心を持ったあなたは

駒澤大学は、2022年で開校140周年を迎えました。その豊かな伝統を守りながら、時代の状況に即した改革を行い、7学部17学科を擁する総合大学となりました。本学の特徴は、緑ゆたかで広大な駒沢オリンピック公園に隣接する閑静な環境にあり、全学部の学生が4年間を、ひとつのキャンパスで学習していることです。そのため、学部の垣根を越えて、充実した教育システムが用意されています。そして、近年の就職不況のなかにあっても、毎年高い就職率を誇っています。