心臓手術に欠かせない「人工心肺」の、自動化への道
自動化が遅れている医療機器
飛行機にはかなり以前から自動操縦機能が備わっており、近年では自動車の自動運転技術が進歩してきました。しかし、医療機器においてはまだまだ自動化が遅れていると言えます。
代表的な医療機器として、心臓と肺の機能を備えた「人工心肺」が挙げられます。心臓の手術をする際には、一時的に心臓の動きを止めるために、人工心肺の方に血液の流れをバイパス(う回)させて、酸素を供給してから再び全身に血液を送り出します。人工心肺に血液を通す際には、送る血液の量やスピードを状況に応じて変えるという繊細な操作があり、現在、すべての操作は手作業で行われています。それを自動化できるようにしようという試みが進められています。
安全でミスのない手術のために
医療機器の自動化は、手術の安全のためにも必要と考えられています。手作業では、ミスが生じてしまうことがあるからです。心臓手術は緊急性のあるものが多く、人工心肺の操作を担当する臨床工学技士は、いつ手術があるのかわからないこともあり、十分な準備時間が与えられるとは限りません。その中での手作業による操作は精神的にも負担の大きいものです。ミスを防ぐためにも、医療機器の自動化が求められています。
難易度が高い自動化
しかし、人工心肺の自動化にはまだ課題が多く、完全自動化までにはかなりの時間を要すると考えられます。人工心肺の機能には複雑な作業が混在していて、それを同時に制御することが技術的に難しいのです。まずは一部の機能を自動化して、人間の手による操作の部分を減らしていくことが検討されています。
現在の医療現場では、ロボットを利用した手術の導入も進んでいます。ロボット手術であれば、人間の手では不可能な操作もできて、より繊細な部位の手術も可能です。現在は医師の動きに追随する形で動作するロボット手術でも、今後は自動化が進んでいくことが想定されており、自動化技術が広く生かされていくと考えられます。
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