SDGs時代の企業を評価する新しい基準
企業を「強化する」
企業は、消費者や社会に受け入れられるサービスや商品を提供することで、自社の強みを獲得できます。さらに、SDGsに関心が集まる現代では、企業も環境や人権、貧困といった問題に無関心でいることはできません。例えば、アウトドアウエア・グッズを展開するアメリカのパタゴニア社は、いち早く環境に配慮した素材を使い、日本でもソーラーシェアリング(太陽光を農業生産と発電とで共有する取り組み)に対する投資を行うなど、環境問題に積極的に取り組むことで知られ、そのことが自社のブランドイメージを向上させています。
相反する利益の追求と社会貢献
従来の企業の社会貢献活動は、寄付活動やボランティア活動が中心でしたが、2000年代以降は、パタゴニア社の例のように、より事業と社会貢献が統合される流れになっています。しかし、こうした活動は利益追求が必要な企業にとって簡単なことではありません。日本の住宅メーカーの中には、住宅建設で生じる大量の廃棄物を非常に細かくリサイクルしている企業もあります。しかし相当の手間、コストがかかるため、「そこまでしてやるべき意義があるのか」「他にやり方はないのか」「株主のためになっているのか」など、企業内でもさまざまな意見が出され、全社一丸となることは容易ではありません。
企業を評価する新たな軸
このように、現代の企業は、それぞれに自社ができる社会貢献のあり方を考え、試行錯誤をしながら実践しています。企業経営と密接な関係にある経営学にとっても、企業の社会貢献のあり方は重要な研究テーマです。時には実際の企業と行動を共にし議論するなど、実践的な研究活動を交えながら、ベストな方法を探っています。また、企業は私たちの生活のあらゆる局面に何らかの形で関わっています。例えば服を選ぶ際には自分の好みが基準ですが、そこに「環境に配慮しているから」「人権を大切にしているから」など、企業を選ぶための新しい評価軸をもたらすことも、経営学の重要な役割なのです。
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