不確実な時代で価値を創造する 「エフェクチュエーション」
売れないと思われていた緑茶飲料
今でこそ店頭に当たり前に並ぶ「緑茶飲料」は、発売当初は飲料メーカーの社内でも流通先でも「お茶に100円も払う人などいない」と評価され、売れないと思われていました。つまり発売時点では、成功を見通すのが困難だったのです。当時の変化が少ない市場環境では、マーケティングの理論も、環境分析から未来を予測して目標を立て、目標達成のための道筋を未来から現在へさかのぼる形で行う「コーゼーション」が主流でした。
エフェクチュエーションとは
一方、物事が移り変わるスピードや不確実性が高まり、「VUCA(ブーカ)の時代」とも称される現代では、新商品や新市場が創造されるプロセスを解明する考え方として、「エフェクチュエーション」が注目されています。エフェクチュエーションは、アメリカの研究者のサラス・サラスバシー氏が提唱した意思決定理論です。成功した起業家の思考プロセスや行動パターンを抽出して体系化し、「手中の鳥の原則」や「許容可能な損失の原則」など5つの原則に整理されています。この理論は「未来は予測不可能」という前提のもとで資源や手段を使い、結果をつくり出すという考え方です。そのため、合理的な考え方や行動が目的に対する最適解として定義されるコーゼーションとは、正反対のものと解釈されがちです。しかしエフェクチュエーションにおいては、それとは異なるタイプの合理性であると明確に理論化されており、21世紀初頭に発表されると大きな反響を呼びました。
インターネットの影響
エフェクチュエーションの登場の背景にある世の中の動きのひとつとして、「インターネットの普及」を挙げる研究者もいます。これにより、それまで企業がつくり込んでいた商品の価値が、消費者やさまざまなステークホルダーを巻き込めるようになったり、逆に企業が意図せず消費者の反応が広がったりという予測不可能な動きが見られるからです。マーケティング研究では、こうした時代性を読み解いていくことも重要です。
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 経営学部 経営学科 准教授 吉田 満梨 先生
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