『若草物語』から考える、アメリカにおける女性のための権利の歴史
19世紀アメリカの世相を反映した小説
19世紀のアメリカの女性作家、ルイーザ・メイ・オルコットが著した自伝的小説『若草物語』とその続編三作は、現在も世界各国で広く愛読されている不朽の名作です。メグ、ジョー、ベス、エイミーのマーチ家四姉妹を中心に描かれたこの小説は、当時のアメリカの世相、特に社会における女性の立場の変化の兆しを、色濃く反映しています。
男女平等に至るまでの長い道のり
19世紀中頃のアメリカでは、奴隷制廃止運動から始まった人種差別反対の機運が、女性差別に対しても拡大し始めていました。当時はまだ、女性が高等教育を受けることのできる大学はほとんど存在しておらず、参政権も女性にはまだ与えられていなかったのです。1848年、ニューヨーク州のセネカ・フォールズで開催された「女性のための権利集会」は、そうしたアメリカ社会で男女平等の実現をめざそうとする人々の最初の集会となりました。しかし、その後の道のりは決して平坦ではなく、ようやく女性にも参政権が与えられるようになったのは、1920年に合衆国憲法の修正条項が可決されてからのことでした。
新しいタイプの女性、ジョーの魅力
『若草物語』では主人公の四姉妹のうち、次女のジョーが、当時のアメリカ社会の常識や価値観に囚われない新しいタイプの女性として描かれています。ジョーは活発な性格で、将来は作家になることを夢見ています。作者のオルコット自身をモデルにしていたと言われるジョーの考え方と生き方は、当時の主な読者層だった中産階級の女性たちに大きな影響を与えました。その影響力は国境を越え、フランスの作家で女性のための権利運動にも尽力したシモーヌ・ド・ボーヴォワールも、『若草物語』を愛読していたと言われています。
このように、当時のアメリカ社会の事情を踏まえた上で『若草物語』を読み返してみると、あちこちに新しい発見があるのです。
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実践女子大学 文学部 英文学科 教授 佐々木 真理 先生
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