美学って何? 「美しい」と判断できる人は良い趣味の持ち主?
「美学」は哲学の一領域
美学とは文字通り「美」とは何かを考える学問です。「美」とは何かを考える思想は古くからありましたが、学問としての美学は17~18世紀頃に体系化されました。1750年にドイツの哲学者バウムガルテンが『美学』という本を出版し、美学は哲学、論理学の一領域とされたのです。ところで、「美しい」と感じることは主観的で、直感的な認識にすぎません。しかし、「私が美しいと感じるものが、ほかの人も美しいと感じること」、つまり美という感覚を共有するコミュニケーションがどのように成立するのかについて考えることが、学問としての美学の出発点です。
アリストテレスまでさかのぼる
古代ギリシアにおいて現代の「アート」という言葉は「テクネー(技術)」という言葉に対応しています。人間はこの「テクネー」によって世界を変えてきましたが、それは単なる技(わざ)だけでなく、知識が必要であると考えられていました。その「テクネー」のなかで特に今日の「芸術」に対応するものを、古代ギリシアでは「ミーメーシス(模倣)のテクネー」であると考えていました。しかし、今日の視点からすると、オリジナリティのない模倣は芸術とはいえないという意見もあるでしょう。この問題は、今日の美学でも重要な問題です。例えば、アンディ・ウォーホルが身近なものをシルクスクリーンの作品に模倣しているのが芸術か否かといった問題にもつながっています。
美を判定できる人は「良い趣味」の持ち主
17~18世紀のフランスにおいて、美を判定する能力は良い趣味の持ち主とされ、良識のある人とみなされていました。例えばフランスの宮廷社会では言葉づかいが洗練されているかが一つの基準でした。パトリス・ルコント監督の映画『リディキュール』は、ルイ16世の時代にウィットに富んだ言葉や会話でセレブな宮廷社会に入り込んでいく人物が描かれていますが、この言葉に現れる「才気」こそが、美の判断能力でもありました。
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