国境をまたぐ大企業 多国籍企業論で読み解くグローバリゼーション
国境をまたいで活動する企業
テレビのCMでみかけるような大企業は、ほとんどが国境をまたいで活動しています。アメリカのIT系企業や飲料メーカー、ファストフードチェーン、日本の自動車や家電メーカーなどもその一例です。外国でビジネスをするということは、自国と異なる商習慣や文化、規制などに対応しなければならず、企業にとって大きなコストがかかります。にもかかわらず、大企業によるグローバルな経済活動は拡大し続けています。なぜ企業は国境をまたいで活動するのか、そのために求められることはなんなのか、といった問いを考える学問を、多国籍企業論といいます。
優位性が世界の市場を支配する
企業が国境をまたいで活動をするのは、自国だけで活動するより大きな収益が見込めるからです。しかし、それはどの企業でもできるわけではありません。多国籍企業論の分野では「技術的優位」「規模の経済」「優秀な経営者や起業家を抱えていることの優位性」「原料の独占」という4つの優位性を条件にあげています。
例えば日本でコーラといえば、アメリカのあるメーカーが高いシェアを占めています。それは、その企業が圧倒的なブランド力を有しており、それが優位性となって日本の市場をいち早く独占したからです。
多国籍企業の功罪
多国籍企業は、異なる文化や習慣が混ざり合うことで新しい発見や価値観が生まれる「グローバリゼーション」の強力な担い手でもあります。そして、私たちもその恩恵を受けています。一方で、多国籍企業はよりコストの安い国に生産やビジネスの拠点を移してしまうため、自国の経済が潤わず、雇用も失われる、といった問題も抱えています。実際に、アメリカで自動車や鉄鋼の工場でかつて働いていた人たちが、職を奪われた結果、社会や政治が右翼的なポピュリズムに流れてしまうということも起こっています。こうした功罪を含め、多国籍企業の戦略や変化を研究することは、グローバリゼーションの未来を読み解くことにもつながるのです。
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先生情報 / 大学情報
専修大学 経済学部 生活環境経済学科 教授 森原 康仁 先生
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