AIが看護師の心を支える? 燃え尽き症候群の対策を考える

看護の現場の課題
高い使命感ややりがいをもって、全国の看護師は日々頑張っています。その一方で、看護師の「燃え尽き症候群」が課題になっています。心身が消耗して、突然やる気がなくなってしまう症状です。特に集中治療室などの「クリティカルケア」と呼ばれる領域で働く看護師は、毎日のように難しい決断を迫られており、燃え尽き症候群になりやすい傾向があります。意識のない患者の治療を続けるべきか、脳死状態の患者から移植用の臓器を取り出すべきかなど、倫理的な問題に直面する場面も多いのです。
AIが看護師を支えるには
そこで、状況改善にAIを役立てようと研究が始まりました。重視されているのは、どこまではAIに任せてどこからは看護師が担うのか、きちんとすみ分けをすることです。AIは明確な答えがある問いへの対処を得意としており、実際に電話対応など型の決まった一般的な業務をAIに任せて看護師の仕事量を減らした病院も見られます。一方で倫理問題のように、状況によって最善が変わる問いへの対処は人間のほうが得意です。そのためクリティカルケアのすべてをAIに置き換えることは難しく、看護師の力は引き続き必要です。
心のケアにAI活用
ただし、つらくなった看護師の心のケアにAIを役立てられる可能性があります。例えば1960年代に開発されたチャットボット「ELIZA(イライザ)」のように、入力された内容をAIがオウム返しにすることで人の心を癒やした事例がありました。これは心理カウンセリングの「ミラーリング」という手法に似ています。対象者の動きや言葉をまねることで共感を示すのです。ストレスを感じた人は、解決策ではなく共感を求めて言葉を発することがあるため、ミラーリングは効果的な心理ケアであることがわかっています。
AIはスマートフォンなどで気軽に使えるようになってきたため、カウンセリングに行く時間がないときも手軽にチャットができます。実際の効果を検証しようと、さらなる研究が試みられています。
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東京情報大学看護学部 看護学科 准教授松石 雄二朗 先生
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