「生理心理学」は体の変化から心をとらえる科学
体と心をつなぐ「生理心理学」
心理学には認知心理学や社会心理学など多くの分野がありますが、「生理心理学」とは生理学的指標を心理学に応用して心の動きをとらえようとするものです。例えば、人がある事柄について考えたり、注意を向けたりするときに体に生じる変化を、生理学的指標を用いて測定・分析することで、心の動きの一端をとらえることができます。また、心拍をはじめとする生理反応を測定するポリグラフ装置は、「ウソ発見器」という別名の通り、虚偽検出のためにドラマなどにもしばしば登場しており、あなたも目にしたことがあるでしょう。
心理学として客観性は高いが
心理状態を知る手がかりとして心拍や脳波、脳磁場(脳の神経活動にともない発生する磁場)などを利用することから、生理心理学は客観性の高い研究ができる学問といえます。ただ、例えば健康診断で得られた検査値について、それが正常であるかどうかの判断が、年齢や性別などで変わるように、生理心理学でも測定値から、すぐには決定できないことが多くあります。対象とする「人間の心」は実に複雑で、解明されていないことの方がずっと多いのです。そうした状況を踏まえつつ、十分な質と量のデータを集め、慎重に結論を導いていかなければなりません。
「なんのための心理学か」、その基本を大切に
生理心理学の知見は、特別支援教育(障がいをもつ子ども等への教育)などにも生かされます。ただ、行おうとする実験や調査が特別支援教育への適用をめざすものなら、それがどのように実際の教育に役立つかを意識する必要があります。実験のための実験でないことはもちろんのこと、調査に協力してくれる被験者や周囲の誰かを傷つけることになりはしないか。データの取得や得られた知見の活用面で問題をはらんでいないか。このようなリスクを常に意識し、検証する姿勢が欠かせません。「心理学者の心知らず」にならぬよう、客観的な生理学的指標を用いて「心を知る」ことに役立ち、多くの人々の教育の質や生活の質の向上につながる研究活動が求められます。
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龍谷大学 心理学部 教授 藤原 直仁 先生
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