岩石に刻まれた記録から大陸地殻深部を探る
地殻深部の現象を岩石から調べる
大陸地殻の深部30~50kmの場では、マグマの生成などさまざまな地球の活動が行われています。しかしマグマができる場所を訪れて、直接観察して調べることはできません。これまでに一番深く掘られたボーリングでもせいぜい12kmです。そこで地下深くの様子を知るために、何億年も前に地殻の深部で作られ、その後地表へ上がってきた岩石を解析する研究が行われています。そのような岩石が広範囲にわたって地表に現れ、良い条件で観察できるのが、南極です。
岩石の中の記録を読み解く
解析するのは、「変成岩」と呼ばれる熱や高圧で変成した岩石です。堆積岩や火成岩などでできた岩盤がもう一方のプレートの下に沈み込むと、その深さでの温度や圧力に適応した鉱物の集合体へと変化します。例えば、海洋底を形成する玄武岩は地下に沈み込むと熱と圧力で緑色、さらに深い場所では青色の変成岩になります。見た目も性質も変わりますが、全体の化学組成は水が抜ける以外、ほぼ変わりません。
南極セール・ロンダーネ山地には、約6億年前に地下深くで作られてから長時間をかけて地表に上がってきた、四国と同程度の面積の岩体があります。南極で採取された変成岩は約25 ㎛の厚さの薄片にし、顕微鏡で観察して調べます。含まれている鉱物の組み合わせや化学組成を解析すれば、その岩石ができた温度や圧力、年代などを知ることができます。岩石にはその変遷の記録が刻まれているのです。
岩石の解析から地殻活動の解明へ
地球の歴史の中で、天然の岩石は一つ一つ違った来歴を持っています。そのため、天然の岩石の解析からある現象に対する普遍的な知見を得るには、それぞれの岩石固有の事情を取り除かなければなりません。そのため、例えばマグマの生成過程に関する一般的な法則性を見出す目的の研究であっても、個々の岩石の変遷についての解析は必要です。その過程で、大陸衝突や断層沿いの水の動きなど、関連するさまざまな地殻内現象の解明にもつながっていくのです。
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先生情報 / 大学情報
京都大学 理学部 地質学鉱物学教室 教授 河上 哲生 先生
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