講義No.13041 地球科学

岩石に刻まれた記録から大陸地殻深部を探る

岩石に刻まれた記録から大陸地殻深部を探る

地殻深部の現象を岩石から調べる

大陸地殻の深部30~50kmの場では、マグマの生成などさまざまな地球の活動が行われています。しかしマグマができる場所を訪れて、直接観察して調べることはできません。これまでに一番深く掘られたボーリングでもせいぜい12kmです。そこで地下深くの様子を知るために、何億年も前に地殻の深部で作られ、その後地表へ上がってきた岩石を解析する研究が行われています。そのような岩石が広範囲にわたって地表に現れ、良い条件で観察できるのが、南極です。

岩石の中の記録を読み解く

解析するのは、「変成岩」と呼ばれる熱や高圧で変成した岩石です。堆積岩や火成岩などでできた岩盤がもう一方のプレートの下に沈み込むと、その深さでの温度や圧力に適応した鉱物の集合体へと変化します。例えば、海洋底を形成する玄武岩は地下に沈み込むと熱と圧力で緑色、さらに深い場所では青色の変成岩になります。見た目も性質も変わりますが、全体の化学組成は水が抜ける以外、ほぼ変わりません。
南極セール・ロンダーネ山地には、約6億年前に地下深くで作られてから長時間をかけて地表に上がってきた、四国と同程度の面積の岩体があります。南極で採取された変成岩は約25 ㎛の厚さの薄片にし、顕微鏡で観察して調べます。含まれている鉱物の組み合わせや化学組成を解析すれば、その岩石ができた温度や圧力、年代などを知ることができます。岩石にはその変遷の記録が刻まれているのです。

岩石の解析から地殻活動の解明へ

地球の歴史の中で、天然の岩石は一つ一つ違った来歴を持っています。そのため、天然の岩石の解析からある現象に対する普遍的な知見を得るには、それぞれの岩石固有の事情を取り除かなければなりません。そのため、例えばマグマの生成過程に関する一般的な法則性を見出す目的の研究であっても、個々の岩石の変遷についての解析は必要です。その過程で、大陸衝突や断層沿いの水の動きなど、関連するさまざまな地殻内現象の解明にもつながっていくのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

京都大学 理学部 地質学鉱物学教室 教授 河上 哲生 先生

京都大学 理学部 地質学鉱物学教室 教授 河上 哲生 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

地球科学、地質学、岩石学

メッセージ

高校では地質学や地学に触れる機会はあまりないと思いますが、南極に行ってみたいなど、一つでも気になることがあれば、ぜひ地球科学の分野に飛び込んできてほしいです。地球科学では物理や化学、生物、数学など他分野の知識が非常に役に立ちます。さらに体を動かすのも好きであれば、未知の世界を体験できること間違いなしです。地球にはまだまだわからないことがたくさんあります。そんな未知の領域を、あなたがすでに持っている知識を使って解き明かしていけるのが、地球科学のすごく面白いところです。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

京都大学に関心を持ったあなたは

京都大学は、創立以来築いてきた自由の学風を継承し、発展させつつ、多元的な課題の解決に挑戦し、地球社会の調和ある共存に貢献するため、自由と調和を基礎にして基本理念を定めています。研究面では、研究の自由と自主を基礎に、高い倫理性を備えた研究活動により、世界的に卓越した知の創造を行います。教育面では、多様かつ調和のとれた教育体系のもと、対話を根幹として自学自習を促し、教養が豊かで人間性が高く責任を重んじ、地球社会の調和ある共存に寄与する、優れた研究者と高度の専門能力をもつ人材を育成します。