ウメやモモの花が咲く時期がずれているのはなぜ? 果樹の休眠を探る
花が咲く時期はなぜバラバラ?
春になるとまずウメが咲き、モモ、リンゴなどさまざまな果樹が順に開花します。種類によって開花時期がずれている要因のひとつに、果樹の休眠があげられます。ウメ、モモ、リンゴなどの温帯落葉果樹は、秋になると葉が落ち、冬は枝と冬芽だけの状態で過ごします。落葉から開花までの間は休眠しており、芽の中の発達が緩やかになります。こうした振る舞いから、果樹には開花すべきタイミングを判断できるプログラムのようなものがあると考えられていますが、その仕組みはまだ研究段階です。細胞組織観察、活性酸素種・糖・ホルモンなどの代謝物、タンパク質、遺伝子などに着目した調査が進められています。
休眠を左右する要素
休眠を左右する要素のひとつが低温要求量です。低温の中で過ごした時間が基準を満たせば、果樹が開花のゴーサインを出します。それまでは一時的に温暖な時期があっても花が咲かないように仕組まれています。低温要求量は種類や品種によって異なっている点も特徴的です。例えばウメ、モモ、リンゴで比較するとウメの低温要求量が一番少なく、モモ、リンゴの順に多くなります。
また、開花日は高温要求量によっても変化します。低温要求量を満たした後、ある程度暖かい期間が続かなければ果樹は開花しません。高温要求量も種類や品種ごとにおおよそ決まっているため、DNAに遺伝的な仕組みが隠されていると考えられています。
地球温暖化から農業を救う
地球温暖化の影響で、果樹が開花する時期は年々早くなっています。果樹は開花ステージが進むほど耐寒性が弱まるため、芽の状態では問題ない気温だとしても花の状態では耐えきれないことがあります。開花時期が早くなると開花中に寒い日に遭遇しやすくなり、霜害(そうがい)などの低温障害が発生し、収穫量が激減してしまいます。
一方、将来的には、本来低温が必要な時期が暖かくなり、開花が阻害されることが危惧されています。
地球温暖化が進む中、果樹の休眠のメカニズムや制御する方法の研究が急がれています。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
京都大学 農学部 農学専攻園芸科学講座 准教授 山根 久代 先生
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農学、果樹園芸学、植物生理学先生が目指すSDGs
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