「花粉化石」が語る地球の歴史

目に見えない花粉からわかること
顕微鏡でしか見えない花粉や胞子の化石を通じて、太古の植物や環境の様子を解明できます。花粉は「スポロポレニン」という丈夫な物質でできた殻で覆われているため、数億年前のものでも良好に保存され、葉や幹よりも化石として残りやすいのです。さらに花粉は空気中に広く飛び散り、雨や川の流れによって遠くまで運ばれるため、ある地層から得られた花粉を調べることで、その周辺一帯にどのような植物が存在していたのかを知る手がかりになります。
恐竜の時代や日本列島の謎に迫る
「花粉化石」は、恐竜が暮らしていた時代の地層の年代を特定するための重要な手がかりでもあります。恐竜の化石が見つかった地層がいつのものか判断が難しい場合、花粉の分析によって、ほかのよく知られた地層との比較が可能となり、年代を絞り込むことができるのです。
例えば、北海道で発見された恐竜「カムイサウルス」の地層の年代も、恐竜の骨の化石の周囲を削った石から見つかった花粉化石によって明らかにされました。また、岩手県の約4億年前の地層から、初期の陸上植物の胞子化石が見つかりました。世界の化石と比較した結果、最も類似していたのは古代の南中国の化石でした。このことから、東北地方は約4億年前、現在よりも赤道に近い南中国付近に存在していた可能性が高いと推定されました。
植物の進化を花粉でたどる
花粉化石を調べることで、植物がどう進化してきたのかを詳細にたどることができます。例えば、最初は単純な構造だった花粉が、時代を経て複雑な形へと変化していく様子が観察されます。特に注目されるのが「被子植物」の登場です。これまで、日本では被子植物がいつ出現したかは不明でしたが、前期白亜紀の地層からその花粉が発見されたことで、日本でもほかの地域と同様に早い段階で被子植物が存在していたことが証明されました。このように、花粉や胞子の小さな化石が、地球の歴史を読み解く大きな鍵となっているのです。
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