既存のネットシステムは破綻寸前! 新しいネットワークを構築する
4台で幕を開けたインターネットの世界
私たちの生活に浸透しているインターネットは、1969年に、たった4台のコンピュータをつないでスタートしました。それが、2010年には8億台を超えるまでに成長しました。しかもこの数には、スマートフォンや通信型ゲーム機などのインターネット接続ができる端末や、企業で使用されるコンピュータは含まれていません。今やテレビや車などあらゆるものがネット回線でつながっており、その数や種類は今後も増え続けることが予想されます。
つぎはぎだらけのネットワークシステム
ところが、インターネットの仕組み自体は、始まった当時とほとんど変わっていません。無線通信によって、場所を選ばず動きながら使うことなど想定外でした。新しい通信機器やアプリケーションが生まれる度に、パッチワークのようにシステムをつぎはぎしたため、現在のインターネットは、複雑きわまりない構造になってしまっています。このまま進めば、2020年頃には現在のインターネットは破綻すると言われています。
「自己組織化」をネットワークの構築に活用
そのような課題を解決すべく、従来とは全く異なる新しいネットワークシステムの研究が急ピッチで進められています。その一つは「自己組織化」によるものです。自己組織化とは、それぞれの個体が限られた情報とシンプルなルールに基づいて動作し、さらに相互作用することで、全体としてうまく機能することを言います。例えるなら、パーティ会場で最初は割り当てられた通りに座っていても、段々と気の合う者同士で集まり、会場内が居心地のよい空間として保たれるようなことと似ています。自己組織化の仕組みを使えば、多数のさまざまな通信機器が集まっても、自然に秩序が生まれ、ネットワークが正しく機能することが期待できます。自己組織化は、私たち人間の営みも含め自然界にたくさんある現象であり、現在、情報科学、数学、化学、生物学、物理学、社会学など学問領域を越えて、自己組織的な情報ネットワークの研究が活発に行われています。
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大阪大学 基礎工学部 情報科学科 ソフトウェア科学コース 教授 若宮 直紀 先生
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