企業の取締役会で、女性の比率を向上させるには?
取締役会はなぜ中年のおじさんばかり?
企業の取締役会と聞くと、「中年以上の背広姿のおじさんばかり」というイメージかもしれません。特に日本では、企業で働く女性の場合、産休や育休のために、20代後半から30代にかけて休職する期間が生じる人が多く、その間はキャリアが一時的に途絶えてしまいます。ずっと働き続ける男性社員との間でキャリアの差が生じ、管理職の地位までなかなか上がれないという状況に陥ります。その結果、取締役の男女比も男性に偏ってしまいがちなのです。
取締役の男女比を法律で是正する
日本だけでなく、海外の企業でも、取締役は男性の比率がかなり高い傾向が見られます。こうした偏りを是正する方法としては、一定数以上の女性を取締役に起用する義務を法律で定めるやり方があります。例えば米国カリフォルニア州では、取締役会にいる取締役が4名の場合はそのうち1名、5名の場合はそのうち2名は女性を起用しなければならない等を法律で定めています。また、女性取締役の数や比率等に関する企業情報をオープンにすることを法律で定めることで、株主や社会から「女性の人数や比率を上げてください」という要望を出してもらうことで、是正していくというやり方もあります。
そして同時に大切なのは、女性が子育てしながらでもキャリアを継続して積み上げていけるような環境づくりです。それには企業だけでなく、社会全体でさまざまな角度から取り組んでいく必要があります。
多様な背景を持つ人々による意思決定
米国カリフォルニア州ではさらに、人種的マイノリティ(少数派)の人を、企業は取締役として最低1名起用しなければならない、という法律を2020年に制定しました。つまり女性に限らず、多様なバックグラウンドを持つ人たちを、企業経営に関わらせようとしています。そうすることで、企業が社会に対してより適切な意思決定をすることができ、このことは企業と社会の関わりと未来を考える上で、とても大切な姿勢なのです。
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金沢大学 人間社会学域 法学類 准教授 村上 裕 先生
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