刑期を終えた後のスムーズな社会復帰に必要なこととは?
出所後の社会復帰は難しい
刑期を終えて刑務所を出所した後、スムーズに社会復帰できない人が大勢います。うまくコミュニケーションがとれないこともその大きな要因となっています。社会生活を送る上でコミュニケーションは必要不可欠ですが、刑務所は自分の気持ちを抑圧し黙っていることがよしとされる所であり、コミュニケーションをとる機会は少なく、スマホなど情報を得るツールも機会もありません。ルーティンに縛られた日常を何年も過ごしていると喜怒哀楽が表現できなくなり、社会に出てからも嫌なことや辛いことから逃げて自分を守ろうとしてしまいます。その行動自体は人間らしさを取り戻したがゆえの反応ですが、周囲からは手がつけられない人物とみなされ、社会復帰から遠のいてしまうのです。
フランスでは寄り添って社会復帰をサポート
生活保護の支給や住む場所の確保など生活に必要なものをそろえること、また再犯させないための監視や介入などが社会復帰の支援であるという考え方が日本では一般的です。しかしフランスでは、日本的な支援はあくまで社会参加の一歩だととらえ、むしろ社会で生きていくために必要な支援を行うことに重きを置いています。またその活動を「支援」ではなく「寄り添う」と表現します。本人が困ったときに安心して頼れるように寄り添いながら、気がつけば社会復帰を果たしていた、という状況をめざしているのです。
いつかは社会に出て生活するから
犯罪に関することはドラマなどで描かれることも多く、法律の中で刑法は一番身近なはずですが、出所後の生活は、私たちにとって遠い世界のことに感じるかもしれません。捕まった後の生活が描かれることはあまりなく、情報も少ないため、刑務所を出た人は怖い人だと思いがちです。しかし、出所した後も彼らの人生は続くのです。
日本でも、社会復帰のための制度上の工夫が始まっています。加えて、私たち自身が知ろうとすること、また罪を犯してしまった人と社会がどう向き合うのかを考えることが重要なのです。
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先生情報 / 大学情報
國學院大學 法学部 法律学科 准教授 安田 恵美 先生
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