日本人移民はお断り? 移民を取り巻く日米の歴史
アメリカと日本人移民の関係
アメリカといえば「移民の国」というイメージがあるかもしれません。しかしすべての移民を歓迎していたわけではなく、太平洋戦争前には日本人移民を厳しく制限するような法律も定められていました。例えばカリフォルニア州では1913年に「帰化の資格をもたない外国人(すなわちアジア人)は土地を持てない」という内容の州法が議会を通過しています。カリフォルニア州では日本人移民が土地を開墾して農業を始めていたため、「土地を東洋人に征服されてしまう」と、排斥をあおる運動が起こっていました。
日本人は労働者の敵?
日本人への反感を強めていたのは、主に白人労働者層で、安い労働力の流入による賃金水準低下の心配や、人種的な差異がその背景にはありました。アメリカでは貧富の差が広がっており、不満を抱いた労働者が労働組合を結成して資本家に対抗していました。しかし日本人移民はお金を稼いで故郷に送ることが目標なので、むやみに資本家と争うような姿勢を見せないと思われていました。こうした要因と人種的偏見があいまって、日本人移民は「企業の味方をする不届き者」といったイメージを持たれてしまっていたのです。
移動する人々の歴史を探る
1924年になると州法だけに留まらず、「日本人移民は1人も入国できない」という内容の法律が連邦議会を通過しました。それ以前から、日本人の渡航を制限する法律は徐々に作られていました。しかし、アメリカに正規入国することが難しくなっても、出稼ぎ希望者は後を絶たず、密航など不正な手段でなんとか入国しようとする者が続出しました。中には日本の役所や警察も協力して、村ぐるみで密航を実施していた記録も残っています。村の経済が海外からの仕送りに依存していたため、出稼ぎができないと困るからです。
密航者や移民など、国境をまたいで移動する人々が置かれた環境はひとつの国の歴史だけを見ていてはわかりません。人々が生きたリアルな姿をとらえようと、国境にとらわれずに歴史を探る研究が続けられています。
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先生情報 / 大学情報
亜細亜大学 国際関係学部 多文化コミュニケーション学科 准教授 今野 裕子 先生
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