中学校の技術科の授業は、何のためにあるのか?
高度技術社会を生きるための力の基礎を身につける
日本の中学校で実施されている授業のうち、「技術科」は何のために行われているのでしょうか。
現在の中学校学習指導要領で、技術科で必修とされている学習内容は「材料と加工の技術」「生物生成の技術」「エネルギー変換の技術」「情報の技術」の4つです。さまざまなものごとの原理を知り、必要か否かを評価・判断・選択できる知識を持ち、技術を適切に活用・管理できる力を得ることをめざしています。それは今後ますます高度化する技術社会を主体的あるいは批判的(Critical)に生きるための力の基礎となります。
STEAM教育の導入で注目される技術科
一方、米国をはじめとする海外では、科学(Science)、技術(Technology)、エンジニアリング(Engineering)、芸術・リベラルアーツ(Arts)、数学(Mathematics)の5分野を横断する形で、探究と創造に主眼を置いた教育理念による「STEAM教育」が注目を集めています。日本の教育界でもSTEAM教育の必要性が提唱されていますが、既存の各教科での縦割り意識が強いことなどから、なかなかスムーズな導入が図れないでいるのが現状です。
そこで現在注目されているのが、その5分野に関わりの深い技術科の授業です。STEAM教育のように理数系の分野を横断するような形の学習では、全体を俯瞰(ふかん)してマネジメントできるような立場の教員が不可欠になりますが、技術科の教員こそが、そのマネージャーとして適任ではないかと考えられます。
制約された状況にある技術科の授業
しかし、現在の中学校のカリキュラムにおける技術科は、かなり制約された状況にあります。中学校だけに設定されている科目でありながら、授業時数は中学校の総授業時数の2.9%(87.5時間)しかありません。学習科目としてより充実させて、分野横断的な教育の要として機能させるには、小学校から高校までを含めて、技術科の学習時間の拡大を図る必要があるのです。
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先生情報 / 大学情報
弘前大学 教育学部 技術教育講座 教授 上之園 哲也 先生
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