体育の授業で子どもたち同士が教え合うと?

子どもたちによる協力学習モデル
小学校の体育の授業では、教員がさまざまな種目の運動の仕方を教えます。一方、教員からだけでなく、子どもたち同士がお互いに運動の仕方を教え合うような協力学習モデルについて、手法や効果の研究が進められています。このモデルは「PACER(Performer and Coach Earn Rewards)」といいます。
PACERの効果
例えば、マット運動における前転や後転などの運動の指導にPACERを導入すると、子どもたち同士でも教え合うようにした方が、技能がより向上する傾向にあることがわかりました。運動の始まりと終わりがあまり明確でないサッカーのような球技でも、ボールを蹴る、止める、場所を移動してパスを受ける、といった動作に絞り込んで効果を測ってみると、やはり技能がより向上する傾向が見られます。教えられる側だけでなく、教える側の子どもも、相手の技能が向上した時に大きな達成感を感じているようです。
最近の小学校では、子どもたちにもタブレット端末が支給されています。体育の授業で互いに教え合う際にも、運動の様子をタブレットのカメラで撮影した動画を再生しながら改善点を教えるなど、以前にはなかった新しい形でのコミュニケーションが生まれています。それにより、PACERによる技能の向上もより効果的なものになっています。
社会的なスキルの向上にもつながる
PACERによる子どもたち同士での教え合いは、自分自身の意思表示の仕方や、他者に対する思いやりなど、社会的なスキルの向上にもつながっています。ただ、こうした取り組みを行う際には、子どもたち同士が正しい知識と理解に基づいた技能を教え合えるようにしたり、運動の苦手な子どもが劣等感を感じたりしないように、教員が適切な指導を行っていく必要があります。一人一人が異なる個性を持つ子どもたちを理解して、それぞれののびしろを大切にした指導のできる教員の育成が、これからの体育教育では求められています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
