無意識から、目に見えない「こころ」を探る
無意識の働き
あなたは友達にLINE等で連絡をする際に、ある一人だけに連絡を入れ忘れたことはないでしょうか。一般的には偶然と考えるかもしれませんが、実はあなたはその人を避けたいと無意識の中で思っており、無意識が指令を出して連絡先から外したとも考えられます。無意識が行動に表れることは、大きな自然災害を経験した人たちにも見られます。大きな津波を経験した子どもが突然学校の階段を駆け上がったりすることもあります。これらは、災害時に経験した恐怖が無意識の中に存在しており、無意識が関係しているのです。
こころを理解する
一心不乱に階段を駆け上がる行動は「津波から逃げなければ」という無意識が引き起こしています。こうした子どもには、専門家や周囲の教員などが「とても怖かったんだね」「この学校には津波は来ないよ」といった言葉をかけるなど、適切なケアが行われない限り、こころはその時のままです。
このようなケアは、日常の学校生活においても重要です。例えば不登校には「いじめられている」「先生と合わない」などという悩みが、また保護者の激しいクレームには「わが子が心配だ」などという気持ちがそれぞれの背景にあるはずです。「こころ」を理解せずに、表面的な対応だけでは、根本的な解決は望めません。
精神分析
心理学の中で、「無意識がある」という前提に立って、心を考える学問を精神分析といいます。精神分析と聞くと、専門家の元を訪れた患者にセラピーを行うイメージかもしれません。しかし、例えば被災地や学校現場で苦しい思いを抱えている人たちが、自らセラピーを受けに行くことは稀です。時には自ら現場に出向くアウトリーチ活動をして、人々の話を聴き、そこで見られる行動からこころを理解することが求められます。その際に精神分析の視点を持つことが重要です。
研究・臨床活動を通してこころの仕組みを明らかにすることは、こころに傷を負った人がより理解され、サポートされやすい世の中を作ることにもつながるのです。
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先生情報 / 大学情報
玉川大学 教育学部 教育学科 教授 原田 眞理 先生
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