性を持たない生物が、オスやメスに変身!?
刻まれても自力で再生するプラナリア
プラナリアという生物を知っていますか? 世界から注目を集めているiPS細胞のような分化万能性幹細胞をもともと体内に持っており、細かく切っても自力で再生する能力があることで知られています。さらに、プラナリアは子孫を残すための巧みな戦略を持ったユニークな生物でもあります。
オス・メスの区別がなく単体で繁殖する無性生殖
哺乳類にはオスとメスがいて、同種二個体間で遺伝子を混合して、子孫を残します。これを有性生殖といいますが、病気や自然環境の悪化などがあっても、遺伝子のバリエーションをたくさん作り出すことで、生き残る確率が高くなるわけです。一方、世の中には性を持たない生物もいます。プラナリアやヒドラなどにオスとメスの区別はなく、ある時期がくると自分で体をちぎって個体数を増やしていきます。これが無性生殖です。
無性生殖は、条件がよければ、どんどん個体数を増やして繁殖することができますが、同じ個体から分化しているだけですから、遺伝子は変わりません。そのため環境の変化に対して大きく影響を受けます。また、有性生殖には、外界からダメージを受けた有害遺伝子をリセットするシステムがありますが、無性生殖はそれもできません。ですから、理論上では長いスパンで見ると絶滅してしまう可能性が大きいのですが、なぜ長い間生き残っていられるのでしょうか。
環境が悪化すると無性からオスやメスになる
プラナリアは、条件がいい時は無性生殖ですが、環境が悪くなると分化万能性幹細胞を利用して、体内に精巣や卵巣を作って有性化し、交尾をして卵を残します。この転換のメカニズムはまだよくわかっていませんが、無性のプラナリアにすりつぶした有性のプラナリアを食べさせると、有性化することがわかっています。これは、有性に切り替わる何らかの化学物質が関与していると考えられます。このように、生物は厳しい環境を生き残るために、巧みな戦略を使って子孫を残しているのです。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
弘前大学 農学生命科学部 生物学科 教授 小林 一也 先生
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