社会問題を解決し、地域に活力を与える「ソーシャルビジネス」
低下する行政サービス
日本は人口減少の局面を迎え、高齢化が進み、独り暮らしのお年寄りも増えています。これまでは自治体が福祉サービスを提供し、高齢者をサポートしていましたが、財政が逼迫(ひっぱく)し、行き届いたサービスが提供できなくなってきました。そこで民間の力を使って対応しようという試みがされています。これが「ソーシャルビジネス」です。ソーシャルビジネスは、高齢者問題だけではなく、環境の保護、障がいのある人への支援、子育て支援、まちづくりなど、社会的な問題をビジネスの力で解決しようという試みです。
社会問題を解決するには
これまでは、このような分野は利益が出にくいので、ビジネスの対象にならないと言われていました。しかし、国や地方自治体がソーシャルビジネスを推進する方針を打ち出したことで、取り組む会社や起業家が増加しています。とはいえ、これまでにはなかった分野のビジネスですから、工夫が必要です。
例えば、一度に1つのことだけを行うのではなく、「荷物を届ける際に安否確認をする」「買い物のついでに病院の送迎を行う」など、複数のことを行ってコストを下げ、ニーズに合わせたサービスを提供するなど、さまざまな取り組みがされています。
心豊かな社会のために
ソーシャルビジネスは、人々が困っている問題を解決すると同時に雇用を生み出し、その地域に定着する人を増やすこともできます。民間の力が中心になったとはいえ、ソーシャルビジネスの活動を支えるのは、自治体や大学の役割でもあります。活動の補助金を出すことも必要ですが、ビジョンを作り、企業や人が能力や資源を提供しやすい環境を整えることも大切です。それが地域経済を活性化させていくことにつながります。
高度成長時代は終わり、人々は心の豊かさを求めています。ともに働く「協働」ということに価値を見出す人も増えています。ソーシャルビジネスという新たな取り組みへの期待は、さらに高まっていくでしょう。
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先生情報 / 大学情報
鳥取大学 地域学部 地域学科 地域創造コース 教授 多田 憲一郎 先生
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