結婚したいのにしない? 人生の意思決定の学問「人口経済学」
未婚率や晩婚率が高い原因は?
少子高齢化は日本の最大の課題ともいえます。その原因の一つとして、未婚率や晩婚率が高くなっていることがあげられます。では何が未婚率や晩婚率を押し上げているのでしょうか。若い世代で「いつかは結婚する」つもりでいる人の割合は、8割以上にのぼります。しかし、恋人がいる人は2割程度であり、婚活をしている人の割合はさらに下がります。将来は結婚したいと思っているけれども、それに向けた行動を始めてはおらず、先送りにしている可能性があります。
時間選好やリスク回避傾向との関係
そこで、30代の男性を対象に、「現在志向」や「先延ばし傾向」といった時間に関する選好(好みの順番)やリスク回避といった人の特性と結婚や婚活との関係が調査されました。その結果、結婚は現在志向の人はその確率は低くなり、リスク回避的な人ほど高まることもわかりました。結婚は将来への不安やリスクを軽減する装置であり、そして現在の生活の満足度が結婚に影響を与えているようです。一方で、将来の結婚のために、今、婚活するどうかを分析したところ、結婚意欲があっても、現在志向の人やリスク回避的な人は婚活をしていないことがわかりました。このように結婚したいと考えていても、時間やお金をかけて婚活をするよりも他の楽しみを優先したり、婚活しても自分が選ばれないかもしれないリスクを避けようとなかなか婚活に踏み出せないと考えらえます。
選びたい人生を選べる社会へ
このように、人口経済学では、就職・結婚・出産といった人生の中での大きなイベントに関する人々の意思決定を解明します。経済学は、「人間は自分が一番うれしくなることを選ぶ」という前提で、意思決定を研究する学問です。消費者が「どの商品を買うか」や企業の投資決定などと同様に、人生のイベントに関する意思決定も経済学の研究対象となるのです。結婚したい人が結婚できない要因の解明は、それを取り除く方法の立案につながります。結婚に限らず、やりたいことができる社会の実現に経済学が役立つのです。
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