講義No.10952 経営学・商学

個人の中でもイノベーションが起こる? カギを握る「両利きの経営」

個人の中でもイノベーションが起こる? カギを握る「両利きの経営」

イノベーションは個人の中でも起こる

イノベーションは組織の中だけでなく個人単位でも起こります。このとき必要なのが、「両利きの経営」と呼ばれる双面性です。双面性は、より効率的に価値を生むための生産性と、新たなアイデアを出すための創造性で成り立ちます。
生産性と創造性の比重は仕事内容によって異なります。例えば研究開発に携わる人は創造性の比重が高く、生産や販売など消費者に近い立場になるほど生産性の比重が高くなります。しかしどちらか一方の力だけでは成果を上げることはできません。研究開発でも現場での生産性の向上や製品化・事業化を予測してアイデアを絞り込むことが必要ですし、生産現場でも正確性やスピードを上げるための方法を考える創造性が求められるからです。

創造性と生産性のバランス

経営学では創造性と生産性がどちらも高いとき、個人のイノベーションが起こりやすくなると考えられていました。しかし日本の企業で働く管理職や現場の従業員などを対象にしたアンケート調査からは、ルーティンワークなどで生産性を高くしすぎると創造性が抑制されることがわかりました。つまり場面に応じて適度に創造性と生産性を切り替え、両者の適切なバランスをとりながら、双面性が成り立つ環境を整えることが個人のイノベーションにつながるといえます。

ミドル層の役割も重要

個人や組織にイノベーションを促すうえで課題となっているのが、ミドルマネジャークラスの働きです。企業ではミドル層がトップと現場をつなぐ役割を果たしており、現場の意見を吸い上げてトップに伝えたり、現場が新しいアイデアを出す機会を作ったりすることで、個人や組織に変化が生まれます。
しかし実際は意見を集める時間が確保できず、部下の生産性だけに注目する傾向にあります。その結果、生産性ばかりが高くなり創造性を発揮させる場が減っているのです。イノベーションが起こりやすい環境を作るためには、ミドル層が役割を自覚できるような研修を行うことなども大切だと考えられています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

大東文化大学 経営学部 経営学科 教授 山田 敏之 先生

大東文化大学 経営学部 経営学科 教授 山田 敏之 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

経営学

先生が目指すSDGs

メッセージ

興味を持ったことがあれば、「失敗するかもしれない」と考えずに、まずは取り組んでみてほしいです。挑戦してうまくいかなかったら、道を引き返してもいいのです。好きなことは一生続けなければいけないわけでもないと思うので、つまみ食いでもかまいません。さまざまな本を読んだり経験を積んだりしてみれば、あなたの目の前におもしろい世界が広がるはずです。
また、大学では自ら勉強のテーマを選ぶことができます。好きなことを追求しても周囲が止めることはない、そんな自由な環境にぜひ入ってきてください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

大東文化大学に関心を持ったあなたは

大東文化大学は、文、外国語、経済、経営、法、国際関係、スポーツ・健康科学、社会学の8学部20学科を擁する総合大学です。進路に合わせて自由に選べる科目の多さと、他学科の科目も選択できるカリキュラムも特徴のひとつ。1923年に当時の国会決議によって設立された本学の建学精神は「東西文化の融合」。この精神は今も息づいており、毎年約400名の学生が海外に留学し、海外からは600名の留学生が学ぶ国際色豊かな大学です。また伝統的に公務員・教員への就職に強く、全国各地で卒業生が活躍しています。