個人の中でもイノベーションが起こる? カギを握る「両利きの経営」
イノベーションは個人の中でも起こる
イノベーションは組織の中だけでなく個人単位でも起こります。このとき必要なのが、「両利きの経営」と呼ばれる双面性です。双面性は、より効率的に価値を生むための生産性と、新たなアイデアを出すための創造性で成り立ちます。
生産性と創造性の比重は仕事内容によって異なります。例えば研究開発に携わる人は創造性の比重が高く、生産や販売など消費者に近い立場になるほど生産性の比重が高くなります。しかしどちらか一方の力だけでは成果を上げることはできません。研究開発でも現場での生産性の向上や製品化・事業化を予測してアイデアを絞り込むことが必要ですし、生産現場でも正確性やスピードを上げるための方法を考える創造性が求められるからです。
創造性と生産性のバランス
経営学では創造性と生産性がどちらも高いとき、個人のイノベーションが起こりやすくなると考えられていました。しかし日本の企業で働く管理職や現場の従業員などを対象にしたアンケート調査からは、ルーティンワークなどで生産性を高くしすぎると創造性が抑制されることがわかりました。つまり場面に応じて適度に創造性と生産性を切り替え、両者の適切なバランスをとりながら、双面性が成り立つ環境を整えることが個人のイノベーションにつながるといえます。
ミドル層の役割も重要
個人や組織にイノベーションを促すうえで課題となっているのが、ミドルマネジャークラスの働きです。企業ではミドル層がトップと現場をつなぐ役割を果たしており、現場の意見を吸い上げてトップに伝えたり、現場が新しいアイデアを出す機会を作ったりすることで、個人や組織に変化が生まれます。
しかし実際は意見を集める時間が確保できず、部下の生産性だけに注目する傾向にあります。その結果、生産性ばかりが高くなり創造性を発揮させる場が減っているのです。イノベーションが起こりやすい環境を作るためには、ミドル層が役割を自覚できるような研修を行うことなども大切だと考えられています。
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大東文化大学 経営学部 経営学科 教授 山田 敏之 先生
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