遺伝子をあやつり病気を治す 制御条件を調べる手法の開発
遺伝子のオン・オフを病気の治療に役立てる
がんやアルツハイマー型認知症等の治療が難しい病気の中には、遺伝子の発現(オン・オフ)の異常が原因で引き起こされるものがあります。例えば細胞内のがん抑制遺伝子が発現しなくなると、がんになってしまうのです。がん抑制遺伝子の発現条件については現在研究が進んでいますが、解明されれば細胞を正常な状態に戻す方法や薬を開発できると期待されています。
遺伝子発現領域に結合している分子を調べる方法
遺伝子発現のオンとオフを制御するためには、遺伝子発現調節領域と呼ばれる部分に結合している分子の種類や機能を明らかにしなければなりません。特定の遺伝子発現調節領域に結合している分子を見つける方法は、古くから開発が進められてきましたが、実施するのに長い時間がかかる、必ずしも生理的な条件下で結合している分子が見つかるわけではない等、課題が多くありました。
意味のある結果を得る可能性の高い手法の開発
より簡単かつ生理的な条件下で遺伝子発現調節領域に結合している分子を検出するために、新たに開発した方法が「遺伝子座特異的クロマチン免疫沈降法(遺伝子座特異的ChIP法)」です。この方法では調査したい領域を丸ごと採取し、結合している分子が何であるかを知ることができます。また、実際に、細胞の中から結合分子が付いたまま遺伝子発現調節領域を取ってくることができるため、生理的な条件下で結合していることが保証されます。
調べたい遺伝子発現情報が含まれている箇所だけを取り出すには、採取したい部分に印をつけますが、このとき使うのがクリスパー系等の人工DNA配列結合分子です。人工DNA配列結合分子を採取したいゲノム領域付近に結合させ、これを目印に染色体を切断することで、人工DNA配列結合分子が結合している領域だけを取ってくることができるのです。
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弘前大学 医学部 医学科 教授 藤井 穂高 先生
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