レアメタル技術でトップを走る日本が取り組むべき課題とは

レアメタル技術でトップを走る日本が取り組むべき課題とは

四重苦の日本

2010年、日本と中国の間の外交問題をきっかけとして、「レアアース」をはじめとする「レアメタル」といった言葉が広く知られるようになりました。明治時代から非鉄金属の精錬・加工技術を磨いてきた日本は、その技術力をレアメタルにおいても発揮し、現在日本のレアメタル技術は世界のトップを走っています。資源はほぼ全部が輸入頼み、エネルギーコストは高く、環境規制も厳しく、労働コストも高いという「四重苦」とも言える条件ですが、日本は高品質なレアメタル加工品の生産大国・輸出大国です。

需要構造の変化で注目

その一例がネオジムというレアアースを使ったネオジム磁石です。これは日本人が発明した、大変高性能な永久磁石で、パソコンのハードディスクに使われています。これにジスプロシウムという資源的に希少なレアアースを加えた磁石は、耐熱性が高まり、より高性能なものです。これはハイブリッド自動車のモータや、高性能エアコン用のコンプレッサ(圧縮機)などに使われています。
産業構造が激変し、レアアースをはじめとするレアメタルを使用した製品の需要が伸びたことで、レアメタルの需要も急増し、大変な注目を集めるようになっています。

これからの課題はリサイクル

レアメタルの需要が急増するとともに、レアメタルのリサイクルの重要性が認識されるようになってきました。
冒頭にあげたように、資源が外交カードとして使われるという心配もあるからですが、もともとレアメタルは地球の誕生からいくつもの奇跡が重なってできた貴重な資源です。それを掘りたいだけ掘って製品にし、使い終わったら捨てるという使い方でいいのかという議論が起こっているのです。
現在の技術では、リサイクルはコストがかかることが問題です。しかし、長期的な視点に立てば、現在ビジネスとして成り立たなくても、産業界全体として取り組むべき問題であることは間違いありません。
リサイクルの技術や環境技術においても、日本はその器用さと「もったいない精神」で世界のトップを走っています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

東京大学 生産技術研究所 サステイナブル材料国際研究センター 教授 岡部 徹 先生

東京大学 生産技術研究所 サステイナブル材料国際研究センター 教授 岡部 徹 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

材料化学、金属学

メッセージ

私は20年以上、レアメタル一筋に研究してきました。今でこそ、レアメタルは日本の産業に不可欠な金属として注目を集めていますが、20年前は一般にはほとんど知られておらず、材料の研究者の間でも注目されない分野でした。それでも、私は偶然出会ったレアメタル研究の面白さに魅せられ、「だれもやらないこと、知らないことを究めよう」と、この研究に没頭しました。したがって、高校生のあなたにも、ぜひ言いたい。「自分がおもしろいと思ったことは、周囲の状況にかかわらずに追究すること!」これがとても大切なことです。

東京大学に関心を持ったあなたは

東京大学は、学界の代表的権威を集めた教授陣、多彩をきわめる学部・学科等組織、充実した諸施設、世界的業績などを誇っています。10学部、15の大学院研究科等、11の附置研究所、10の全学センター等で構成されています。「自ら原理に立ち戻って考える力」、「忍耐強く考え続ける力」、「自ら新しい発想を生み出す力」の3つの基礎力を鍛え、「知のプロフェッショナル」が育つ場でありたいと決意しています。