宇宙太陽光発電は、究極の持続可能なエネルギー源
宇宙開発がもたらすもの
宇宙開発は生活に大きな恩恵をもたらしてきました。GPSや気象衛星、そして通信衛星などは、生活を便利にし、なくてはならないものになっています。そして、ほかにも私たちにとって有効な宇宙開発の候補はいくつかありますが、大きな期待を集めているのが「宇宙太陽光発電システム(SSPS)」です。
24時間発電可能など、メリットはいろいろ
赤道上空36000kmの軌道に設置した大型の反射鏡で、太陽光を集めてエネルギーに変換します。反射鏡は約4km四方の大きさですが、無重力の空間に設置するので鉄骨や支柱を使う必要がありません。
また、宇宙太陽光発電のメリットは効率のよさです。地上では夜はもちろん、雨や曇りの日は発電できませんが、宇宙では光を妨げるものもなく、静止軌道上にはいつも太陽光が照りつけ24時間発電可能です。また太陽光は大気を通って地上に届くのでかなり減衰します。しかし宇宙には大気がないので、太陽からのエネルギーが強い状態で利用できます。集められたエネルギーは、地上へレーザー光を使って送信します。マイクロ波を使う方法も検討されていますが、地上の受信装置が巨大になるので、小型の滑走路ぐらいの大きさで受信できるレーザー光の方が現実的です。
たくさんの課題の克服をめざして
究極の持続可能なエネルギー源として注目を集める宇宙太陽光発電ですが、実現までには多くの課題があります。まず費用の削減です。試算では、日本の年間の国家予算を上回るといわれています。反射鏡や集光板などを宇宙へ運ぶロケットの打ち上げ費用が、現在の10分の1以下にならないと実現できません。また太陽光を集めるので温度が300~400℃の高温になります。この熱をどうやって逃がすのかが問題です。いろいろな冷却装置が考えられていますが、技術開発によって小型軽量化しないと実現性は低くなります。
2030年の実現をめざして研究が続いています。これらの課題を解決できれば、将来は宇宙からのエネルギーを使った生活ができるかもしれません。
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先生情報 / 大学情報
徳島大学 理工学部 理工学科 機械科学コース 教授 長谷崎 和洋 先生
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