講義No.11480 数学

数学的に作った「符号」のルールが、デジタルデータの正確さを守る

数学的に作った「符号」のルールが、デジタルデータの正確さを守る

証明するのに300年近くかかったボールの問題

一つのコインの円周に沿って同じ大きさのコインを並べると、何枚まで並べられるでしょうか。実験してもらうと分かりますが、最大6枚です。では、3次元のボールで同じ問題を考えるとどうでしょうか。これも「12個まで」であることが知られているのですが、「どうやっても13個は並べられない」ことが証明されるまでに300年近くかかりました。これらを「接吻数(せっぷんすう)問題」と呼びます。この問題はもっと高次元の場合にも考えられており、4次元、8次元、24次元の接吻数は決着がついていますが、他の次元については未解決です。

小さな傷が入ったCDも正しく再生

「4次元」でさえ想像できないのに8次元、24次元なんて、と感じるかもしれません。しかし、接吻数を含む研究分野である「符号理論」は、すでに身近なところで活用されています。その1つがCDプレーヤーです。音楽CDのデータ記録面に少しくらいの傷や汚れがついていても、音飛びはめったに発生しません。符号理論の一分野である「誤り訂正符号」の技術を用い、デジタルデータにチェック用の符号を加えることで、データ読み込み時のエラーを訂正できるようになったのです。誤り訂正符号は「有限体上の高次元ベクトル空間におけるボールの詰め込み」として解釈できるため、接吻数問題と深くつながっています。

量子コンピュータにおける誤り訂正

現在世の中で使われているコンピュータでは、0、1が並んだデジタルデータの処理によって計算や通信を実現しています。そのためエラーが起こる場合は離散的なものだけ考えればよいことになります。 しかし実用化に向けて研究が盛んに行われている量子コンピュータの世界では、 0、1の二点系の代わりに「複素射影直線」という連続的なエラーが起こり得る系を用いて計算や通信を行います。 現在、量子コンピュータ上で計算や通信のエラー訂正を行うための符号の研究が盛んに進められています。

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先生情報 / 大学情報

広島大学 理学部 数学科 准教授 奥田 隆幸 先生

広島大学 理学部 数学科 准教授 奥田 隆幸 先生

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数学、代数学、幾何学、解析学

先生が目指すSDGs

メッセージ

あなたは、自分で数学の定理を発見した経験はありますか。中学・高校の数学でいろいろな定理を学ぶと思いますが、例えば、それを発展させてオリジナルの定理を考案するといったことは楽しい研究になります。
私は、中学・高校生の頃は身近な数学的な題材から面白い定理を探すのが大好きで、それが現在の研究に結びついていると思います。題材は身の回りにいくらでもあるので、背伸びをして難しい本を読む必要はありません。自分で定理を発見したときの喜びや、そのために何か月も悩むという経験は、きっとあなたの数学脳を鍛えてくれます。

先生への質問

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