海鳥はどこまで飛んでいけるの?
ハイテク機器で動物の行動を追跡
動物行動学はさまざまな生き物の生態を調べる学問です。従来は様子をじっと見守る「観察」が中心でしたが、近年ではGPSやセンサー、ビデオカメラなどハイテク機器を動物につけてデータを収集する「バイオロギング」による追跡で、人間の観察では追えなかった空中や海中、地中などでの動物の行動が明らかになってきました。
海鳥の飛行経路を調査
例えば「オオミズナギドリ」という海鳥は、陸上での子育ての様子は観察されていましたが、海での行動はわかりませんでした。それがバイオロギングを使った調査で飛行経路などがわかってきました。
岩手で子育てをしているオオミズナギドリの親鳥は、オスもメスもエサとなるカタクチイワシを求めて、遠く北海道南沖まで300~500kmも飛んでいくのです。
また岩手と新潟にすむオオミズナギドリを比較すると面白いことがわかりました。新潟のオオミズナギドリのオスは、津軽海峡を越えて北海道沖までエサをとりにいきますが、メスは繁殖地の周辺でエサをとるだけなのです。なぜメスは北海道沖まで遠征しないのか? メスはオスより体が小さいので風が強い津軽海峡を越えられないのか、あるいは単に北海道までの距離が岩手より新潟の方が長いからなのかなど仮説を立て、さらなる調査が進んでいます。
精巧なナビ機能はいかに獲得されたか
ところでオオミズナギドリは、1回エサをとりに行くのに数百~1000kmほどの距離を飛びますが、海にはたいした目印もなく、どこも似たような景色なのに、どのようにして方向や自分の位置を知るのでしょうか。しかも彼らは、夜明けまえに巣を飛び立ち、日没時に戻るという規則的な生活をしています。ちょうどよい時間に巣まで戻れるようにどうやって時間を計っているのか、その能力はいかなる進化を経て獲得されたのか、興味は尽きません。
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先生情報 / 大学情報
名古屋大学 理学部 地球惑星科学科 教授 依田 憲 先生
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