乳児期からのサポートで、障がいのある子の人生が変わる

乳児期からのサポートで、障がいのある子の人生が変わる

乳児期から障がいのある子を支援

理学療法には、乳幼児を対象とした「小児理学療法」という分野があります。障がいのある子が一定数生まれることは避けられませんが、乳児期から対応すれば、その子の人生そのものが変わってきます。
例えば重度の脳性まひの子は手足を動かしにくく表情の表出も少なくなります。乳児期から理学療法士が関わって手足を動かすと、本人は楽になります。子どもの笑う表情は親に安心感を与え、親子関係は変わっていきます。
動ける子は、チャレンジしたいことを支援すると、達成感や自信につながります。大きくなって「サッカーをしたい」という望みをかなえた子が、自分の道を見つけて柔道整復師になったという例もあります。

乳児の動きで判別

人は「体は自分で動かしている」と思っていますが、それだけではありません。両手を前に出すとバランスを取ろうとして勝手に体が後ろに下がりますが、このような意識されない動きにより運動は成り立っています。乳児が機嫌がよいと仰向けで手足をバタバタ動かす「ジェネラルムーブメント」とよばれる意思とは関係ない自発運動が生後から3カ月までの間に見られます。これを観察すると、健常者と脳性まひなど中枢神経に障がいがある乳児とでは動きが異なります。健常者は動きがスムーズになりますが、脳性まひなど中枢神経に障がいのある子は動きが単調になったり、ぎこちなくなったりするのです。脳性まひはMRIで検出することができますが、ジェネラルムーブメントで検証すると症状の度合いまでわかります。

誰もが生きやすくなるために

病気や障がいがあると、親子で苦労や生きにくさを感じることもあります。障がいのある子も、理学療法士が乳幼児期からリハビリすることで、できることが増えて体を動かしやすくなることがわかっています。乳幼児からのサポートがあれば、その子は思いや願いをかなえることができるのです。それが親を支えることにつながり、親子の幸せな時間をつくることにもなります。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

東北福祉大学 健康科学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻 准教授 五十嵐 守 先生

東北福祉大学健康科学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻 准教授五十嵐 守 先生

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生体医工学、リハビリテーション科学

メッセージ

固定概念があると多くを見落としてしまうので、広い視野をもちましょう。興味がある分野は、「本当はどうなんだろう」という感覚で調べましょう。そして、図書館や書店で、気になる本を手にしてみてください。私自身、臨床を約20年経験したのちに、「赤ちゃんと脳科学」という本と出会って衝撃を受け、小児理学療法を学ぶため大学院に進学しました。たまたま手にした本が、人生を変えることもあるのです。そしてこれは多くの子どもの幸せに関わる研究です。興味があれば、一緒に考えましょう。

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東北福祉大学は、「行学一如」(理論と実践の融合)を建学の精神に掲げ、SDGsや地域共生社会の実現に貢献する人材の育成に努めています。本学は福祉・心理・行政・経営・教育・看護・リハビリ・医療事務が学べる4学部8学科の幅広い学びを擁する全国有数の福祉系大学です。キャンパス内には、特別養護老人ホームや保育園、幼稚園、附属病院などがあり、学生の実習やボランティア活動の場にもなっています。大学で学んだ知識を、現場で実践することにより、実践力及び考察する力・理論化する力を兼ね備えた人材の育成をめざします。