介護で腰痛を起こさないための動作解析
介護現場での移乗介助
介護福祉職は、高齢者や身体障害者などの要介護者に対して日常生活の支援を行っています。要介護者が車椅子を使用している場合は、車椅子からの乗り移りの動作である「移乗」を介助する必要があります。食事・入浴・排せつなど1日の中での移乗の頻度は高く、その都度、要介護者の体重を支えなければならないので、介護福祉職にとっては非常に大きな身体的負担がかかり、腰痛の原因になっています。
腰痛を起こさない動き
介護を学ぶためのテキストには、移乗介助についても説明がありますが、一連の流れしか書かれていないものがほとんどです。例えば「腰を下げる」と書かれていたとしても、腰をどの程度下げるかによって、身体の負担は変わります。
そこで、介護福祉職として10年以上勤務していて腰痛を起こしていない人たちの、移乗介助時の体の動きの計測が行われました。計測には、スポーツ分野などでよく使われている三次元動作解析装置を用います。これは、カメラを使用することにより、身体の各部位がどのように動いているかを分析するものです。また、筋肉量の計測による各部位の筋肉の使い方や、床反力の計測による身体のバランスのとり方の分析も行われました。これらのデータをもとにして、腰を痛めずに移乗介助する体の動きの標準化が進められています。
正しい教育と動きの周知が必要
高齢化が進む日本において、介護の需要は年々増加しており、介護福祉職不足が続いています。一方で、離職率も高く、理由のひとつには腰痛をはじめとする身体的な負担が挙げられます。そのため現在は、国の方針として介護施設などへのリフトや介護ロボットの導入が進められています。しかし、施設の構造や狭い場所などでは物理的に機器が入らないケースがあるほか、要介護者側の機材に乗ることへの不安や負担もあることから、人による移乗介助がゼロになることはないでしょう。そのため、正しい移乗介助方法の教育が必要であり、動作分析により標準化された動作の周知が求められます。
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広島文教大学 人間科学部 人間福祉学科 准教授 棚田 裕二 先生
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