“可能性をあきらめない”を支える作業療法
意思伝達にICTを活用
私たちは普段、言葉や身ぶりなどさまざまな表現方法で自分の意思を伝えます。しかし、進行性の神経難病を患う重度身体障害の人たちは、徐々に体の機能が失われていき、自分の意志や感情を他者へ伝えることが困難になっていきます。こうした人たちに対して、多職種と協力しICT機器を使って意思伝達の支援をする実践が行われています。
β波(脳波)でコミュ二ケーションを
ICTによる意思伝達支援には、さまざまな生体信号が使われます。その中で、脳波を意図的に検出するための研究が行われました。MCTOS(マクトス)という意志伝達装置を効果的に活用するために、β波(集中している、心理的に警戒など)をいかに検出するかが課題です。この研究は、重度身体障害の人が、話すことや身ぶりというからだの動きによって、意思を伝えられなくなった中で、β波を意図的に出すことで意思伝達する方法を模索するものです。実験ではβ波と不快な思いとの関連から、不快な思いをイメージすることが有効と考えられました。不快な思いは人それぞれですが、誰もが感じる不快な思いの一例として、「黒板を爪で引っかいたときの音」をイメージすることで、β波を意図的に検出する可能性が見出されました。症状の影響によって話すこと、からだを動かすことが難しくなっても、生体信号を活用することにより、意思が伝わる可能性が高まるのではと考えられています。
他者とのコミュニケーションが可能に
ICT機器を使って自らの意思を伝えることができるようになれば、話すことや身ぶりというからだの動きが難しくなる進行性の神経難病を患っている人も、介護者や家族とコミュニケーションを図ることができます。またICT機器を使って仕事や買い物などができるようになることも期待されます。対象者にとって家族や社会の中での仕事や役割の獲得に向け、作業療法士は対象者のひとりひとりの身体構造や心身機能に応じて、ICT機器を使いやすくなるための支援をする重要な役割の一端を担っているのです。
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先生情報 / 大学情報
東北福祉大学 健康科学部 リハビリテーション学科 准教授 紀國谷 恵子 先生
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