祭りは誰のもの? 仙台七夕まつりに見る、文化資源の保存と活用

祭りは誰のもの? 仙台七夕まつりに見る、文化資源の保存と活用

祭りの価値を高める

今般の文化財保護法の改正により、祭りをはじめとする各地域に伝わる文化資源の更なる活用に期待が集まっています。国は祭りの「文化財としての価値」を保ちながら、観光事業者や見物客と共に祭りの「観光資源としての価値」も高めたいと考えていますが、その当事者となるのは、祭りを執り行う地域住民です。例えば、祭りに参加する子どもが見物客に手を振ったり、安全のためにロープを張って交通整理をすると「伝統的な祭りらしさが薄れる」と見物客などから批判されることがあります。これは時代に合わせながら祭りを守ろうとする地域住民にとって、大きな葛藤になっています。

地域の創意工夫

一方で、さまざまな変化にうまく対応している例もあります。例えば、仙台市で開催される「仙台七夕まつり」で使われる色鮮やかな竹飾りは、店ごとに製作する風習が消え、現在では業者に製作を外注することが増えています。しかし、受託した業者はパートとして地域の女性たちを雇用して製作にあたっています。その現場は製作技術の貴重な伝承の場になっており、またパート女性たちにとっては仕事を超えた大切な居場所にもなっています。もともとこの祭りは、藩主が子女の技芸上達のために奨励し、女性や家庭の行事として継承されてきたといわれています。つまり、現代の事情に合わせて創意工夫した結果が、期せずして原点に近づいた例といえます。

文化人類学の役割

ほかにも、地域の商店街から地元資本の商店が姿を消しつつある昨今、地域の伝統行事を継承することの難しさも語られています。現在の七夕飾りは、形や素材を変えながら広告媒体としても機能するなど、伝統の仙台七夕まつりを守るためにさまざまな工夫が行われています。
伝統的な祭りの姿が変わりゆくことを批判するのではなく、現在地元で活動する人たちの視点に立ちながら、変化に対応するための論理や戦略を調査・記録し、分析することが文化人類学の役割です。そのうえで、地域の文化が新たに変化するプロセスや、その解釈について考えていくのです。

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先生情報 / 大学情報

東北福祉大学 総合マネジメント学部 産業福祉マネジメント学科 教授 安藤 直子 先生

東北福祉大学 総合マネジメント学部 産業福祉マネジメント学科 教授 安藤 直子 先生

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文化人類学、民俗学

先生が目指すSDGs

メッセージ

文化人類学とは、フィールドワークを手法としながら、その土地の暮らしや考え方の枠組みを知ろうとする学問です。研究室では毎年さまざまな場所に調査に出かけていますが、フィールドワークを通じて学生たちは、世の中にはさまざまな生き方、考え方をする人がいることを知り、他者への想像力や他者との関係を築く力を身につけています。こうした力は、将来さまざまな場面で役立つはずです。知らない場所へ出かけることが好きな人、人との出会いを楽しみたいという人であれば、この学問の魅力を大いに感じられると思います。

先生への質問

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東北福祉大学では、建学の精神である「行学一如」(理論と実践の融合)を目指し、キャンパス内にある附属病院「せんだんホスピタル」や介護老人保健施設「せんだんの丘」、幼稚園や保育所等の関連施設で様々な実習を行っています。実学臨床教育やインターンシップを行い、より現場に近い教育を実現します!福祉・マネジメント・子ども・医療・リハビリをキーワードに4学部9学科で構成されている「福祉の総合大学」です!