人が作る「コミュニティ」は多様:出会いと別れと腐れ縁の社会心理学

人が作る「コミュニティ」は多様:出会いと別れと腐れ縁の社会心理学

コミュニティの作られ方

人と人のつきあい方は、ところ変われば大きく変わります。例えば、日本とアメリカを比較すると、日本では新しい出会いがめったになく、安定した腐れ縁がずっと続きがちで、アメリカでは新たな出会いと別れにあふれています。同じ国内でも、地域の差(いわゆる地方と都市部)もありますし、時期による違いもあります。こうした違いは、そこに生きる人々にどう影響するのでしょうか。

大学生の友人関係に必要なのは?

例えば、コミュニケーションにおいて、自分の考えを相手に伝える「表現スキル」と、相手が伝える内容を受け取る「理解スキル」。そのどちらを磨くことで上手に人間関係を保持できるかは、状況によります。日本の大学1年生と上級生のそれぞれに、「理解スキルの高さ」と「友人関係に対する満足度」を問うアンケート調査が、ある年の4月から7月にかけて行われました。すると上級生では「理解スキルが高いほど、友人関係に対する満足度も高い」という結果が出たのに対して、1年生では「理解スキルが高いほど、友人関係に対する満足度は『低い』」という結果でした。背景には、上級生は大学での友人関係がある程度構築されているのに対して、1年生は初対面同士が多く、友人関係をこれから作る段階にあるという、状況の違いがあると推察されます。そして、友人関係が構築されたコミュニティにおいては理解スキルの高さが満足度につながるものの、自分に合う人を見つけて友人関係を構築する状況では理解スキルはプラスに働きにくいようです。

多様化するコミュニティのなかで

大学のほかにも、会社や地域社会といったコミュニティにおいては、「新卒採用者と転職者」「日本人と外国人」「地元で育った人と移住者」といった、さまざまな背景の違いが存在します。社会心理学では、実験や調査やビッグデータの分析などを通して、コミュニティのあり方が人の心の働きや振る舞いにどう影響し、またその振る舞いがどのようなコミュニティを形成していくか、そのプロセスを探っていきます。

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滋賀大学 経済学部 総合経済学科 教授 竹村 幸祐 先生

滋賀大学 経済学部 総合経済学科 教授 竹村 幸祐 先生

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社会心理学

メッセージ

自分の常識の「外にあるもの」に関心を持ってほしいです。日々の生活ではどうしても自分の目の前のことに必死になり、それが世の中のすべてだと思ってしまいがちですが、世界は広いはずです。人との出会い、知らない土地、インターネット、本など、常識の外の世界に触れる方法はたくさんあると思います。大学という場やそこで出会う教員のことも、世界を広げる「道具」のひとつに位置づけてもらえたらと思います。

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