がんを治し、宇宙にも存在する、「重粒子線」とは?
重粒子線は、放射線の一つ
重粒子線とは、放射線の一つで、ヘリウムイオンより重い粒子線のことを指します。宇宙では、太陽や、はるか彼方の超新星から出た高エネルギーの重粒子線が高速で飛び交っています。地上では、加速器という機械で光の速さに近づけて重粒子線を作ることができ、がんの治療にも利用されています。この「重粒子線治療」は、世界でも注目されています。
がんに強く、体に優しい
重粒子線治療は、通常の放射線治療と比べて、二つの大きな特長があります。一つは、「がんに対して強力にダメージを与える」ことです。通常の放射線治療では治りにくい、大きな腫瘍、骨・軟部肉腫、悪性黒色腫などにも、大きなダメージを与えて効果を発揮します。もう一つは、「体に優しい治療である」ことです。がん病巣に集中して照射できるため、周りの正常部位にはダメージが少ないのです。また、照射回数を減らすことができるため、短期間で治療することが可能です。この革新的な重粒子線治療は、日本が世界に先駆けて実運用に成功し、世界をリードしています。
重粒子線治療のさらなる効果向上、最適化、がん以外の病気への適応拡大に向け、医学、物理学、工学、放射線生物学など多様な分野の専門家が連携して研究が進められています。
放射線が飛び交う宇宙で人が生きるには
現在、国際宇宙ステーションでの長期滞在が可能となり、船外活動の機会も増えています。月へ、火星へと、有人宇宙探査の計画が進められており、民間レベルでの宇宙旅行も夢物語ではない時代が近づいています。一方、宇宙では、磁場と大気に守られている地球上とは異なり、高エネルギーの重粒子線を含む宇宙放射線が飛び交い、ありとあらゆる物はじわじわと被ばくしてしまいます。宇宙で人類が生きていくためには、放射線による被ばくの問題を解決する必要があるのです。宇宙で安全・安心に暮らすために、重粒子線による生物影響の研究が進められています。
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先生情報 / 大学情報
群馬大学 重粒子線医学研究センター 教授 髙橋 昭久 先生
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