失業率を下げるには? 大学生の就職は? 労働経済学で考える

失業率を下げるには? 大学生の就職は? 労働経済学で考える

個人と企業のミスマッチ

労働経済学において、失業率の増減の要因は、働き手となる人口の増減や景気の浮き沈みだけでなく、「求人と求職のミスマッチ」も挙げられます。「就職したけれど、こんなはずではなかった」という企業と個人とのミスマッチが退職を招くことも多いのです。新卒採用でのミスマッチを防ぐには、「キャリア教育」がひとつのカギになります。学生が就職前に自分の適性や実現したいことなどの自己分析を十分に行い、企業や職種といった労働市場を理解したうえで、自分に合った就職先を見きわめていくのです。

企業が採用するのはどんな学生?

一方で、企業が学生を採用する際にどのような要素を重視するのか、ビッグデータを用いた回帰分析で検証した研究があります。結果は男女で違いがみられました。男性は「部活動」、女性は「資格」が重視されることが実証されたのです。女性には即戦力が期待できる人材であることを求める一方で、男性は入社後に教育して長期的に育成すればいいと考える、労働市場における企業の男女差別があぶり出されたといえます。また、「大学の成績(『優』の数)」は、企業が採用を決定する際に影響しないこともデータで示されました。これは、大学の成績評価に対する、企業からの信頼の低さのあらわれでもあります。そのため、客観性や公正性の観点から成績評価基準を見直して開示する大学もみられます。

研究分野が多岐にわたる労働経済学

また、企業にも従業員のモチベーション向上につながる人事制度の設計が求められます。仕事に対するモチベーションを考慮するとき、報酬や昇進といった「外発的モチベーション」だけでなく、達成感や自己決定感から生じる「内発的モチベーション」に目を向けるのも重要です。従業員がモチベーションの増減やミスマッチを感じる際には、心理的な要素も影響するからです。
「失業率の低下をめざす」というテーマにおいて、労働経済学は教育や心理の分野にもまたがる学際的な研究分野だといえます。

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先生情報 / 大学情報

神戸医療未来大学 人間社会学部  教授 船橋 伸一 先生

神戸医療未来大学 人間社会学部 教授 船橋 伸一 先生

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労働経済学、教育経済学

メッセージ

さまざまな視点から、物事の全体を捉えることを意識しましょう。「群盲象を評す」というインドの寓話(ぐうわ)があります。目の不自由な人たちがそれぞれ象の耳や足や尻尾を触り、どんな生き物かを話し合ったというもので、それぞれ「うちわのような生き物」「丸太のよう」「ヘビのよう」と語ります。どれも間違ってはいないのですが、情報が一部だけだと全体像にたどり着かないという話です。学びも同じで、いろいろな角度や立場から物事をみて、正しい分析や判断につなげていきましょう。

神戸医療未来大学に関心を持ったあなたは

健康スポーツ学部では、①生涯スポーツ、② パラスポーツ指導者、③リゾートレクリエーション、④スポーツマネジメント、⑤健康・ビューティー、⑥スポーツデータサイエンス、⑦スポーツリーダーの7コースがあり、4年間で様々なコースを習得できます。人間社会学部は、未来社会学科と経営データビジネス学科があり、未来社会学科には、①社会経済、②心理学、③社会福祉の3コースがあります。経営データビジネス学科は大阪天王寺にある国際色豊かなキャンパスです。姫路キャンパスには朝夕2食付きの学生寮が敷地内にあります。