心にアプローチしない心理療法とは?

周りの人の関わり方に着目する「家族療法」
心理療法というと、1対1のカウンセリングを思い浮かべる人が多いかもしれません。一般的な心理療法では、カウンセラーが心の問題を抱える人の感情や考えに寄り添って、問題解決を支援します。
一方で、心理療法には家族など複数の人を対象にカウンセリングを行う手法もあります。それが「家族療法」です。家族療法では、問題を抱えている個人の内面ではなく、コミュニケーションに着目します。人と人との関わりを通してどのような相互作用が生まれているのかに焦点をあて、コミュニケーションのあり方を変えることで問題解決をめざすのです。
視点を変えることで支援の幅が広がる
不登校を例に考えてみましょう。多くの心理療法は子どもの内面にアプローチし、学校に行けない原因を探り解決しようとします。しかし家族療法では、誰かや何かを問題や原因とは考えません。その代わりにどんなやり取りが起こっているかを考えます。例えば、母と子どもで朝起きる起きないをめぐったやり取りを繰り広げ、最後は子どもが布団をかぶって返事をしなくなり、母が諦めて部屋から出ていくというやり取りが起こっている、というようなことです。そして、そのやり取りが毎日繰り返され、結果的に不登校という状況が続いているというように考え、この繰り返されるやり取りを変えることをめざしていきます。
不登校が問題だ、子どもの逃げグセが原因だなどの考え方では支援が行き詰まりがちですが、起きていることを相互作用の視点に変えられることでアプローチの幅も大きく広がります。
フレキシブルな発想力を身につけよう
家族療法を学ぶことは、さまざまな角度から物事を見る目を養うことにつながります。視点を変えるだけで、今まで思いつかなかったような発想が生まれたり、目の前で起こっている現象が全く違うものに見えたりすることもあります。それは、カウンセラーとして困っている人を援助するのに役立つのはもちろんですが、自分自身を理解し、自分の可能性を広げることにも通じるのです。
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神戸医療未来大学人間社会学部 未来社会学科 講師田中 智之 先生
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