講義No.09788 史学・地理学

史料を読んでもわからないこと~歴史の「謎」について考える~

史料を読んでもわからないこと~歴史の「謎」について考える~

「歴史学」と史料

「歴史学」とは、昔の人の書いた書物などさまざまな「史料」を分析して、そこから導かれた事柄を積み重ねていく学問です。学校の教科書に書かれている内容にも、すべて史料の裏付けがあります。ところが実際には、史料に書いてあるのによくわからないことや、まだ分析されていないことがたくさんあるのです。そのような問題の一つとして、奈良時代の皇位継承法とされる「不改常典(ふかいのじょうてん)」を取り上げます。

皇位継承について定めた皇位継承法

皇室典範(こうしつてんぱん)は最初に明治時代に大日本帝国憲法と同時に制定され、戦後に日本国憲法と一緒に現在の皇室典範が制定されました。その中では皇位を継承できる資格者や、資格者の中の順位などが定められています。このような規定は一般的に「皇位継承法」と呼ばれます。皇室典範が制定されるまで、江戸時代以前の日本にはまとまった皇位継承法はないと考えられていました。それに準じるのは、鎌倉時代の末に持明院統と大覚寺統とが交互に天皇を出すことになった「両統迭立(りょうとうてつりつ)」くらいでした。

天智天皇が定めたという「不改常典」

『続日本紀(しょくにほんぎ)』は、『日本書紀』の続きとなる国定の歴史書です。奈良時代に関する基本史料で、大仏造立、墾田永年私財法など、奈良時代の出来事の多くはこの史料を根拠にしています。『続日本紀』の中には、何人かの天皇が即位する際に「「不改常典」にもとづいて皇位継承がなされた」との記述があります。それは「天智天皇が定めた」とも書かれており、平安時代以降になると、天皇が即位する際の宣言として「「天智天皇が定めた法」により即位する」という文言が定型句となりました。1951年、研究者の岩橋小彌太がこの「不改常典」は皇位の直系継承を定めた皇位継承法だという説を発表しました。そこから半世紀以上議論されていますが、その具体的内容をめぐっては、いまだに定説といえる解釈はありません。最近は譲位を定めたものだという説が注目されています。

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四天王寺大学 人文社会学部 日本学科 教授 須原 祥二 先生

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日本史学、歴史学

メッセージ

本をたくさん読んでください。好奇心のおもむくままに好きなジャンルで構いません。大事なのは、「一つの本を通して本を読む」ということです。
インターネットは、どうしても自分に都合のいい情報だけをつまみだして、自分の都合のいいように解釈しがちです。自分と違う意見や自分にとって常識外の考え方について、どうしても読みとばしてしまいます。
本はひとつの一貫した主張にもとづいて書かれていますから、著者の主張を理解しようとしなければ読めません。本を読んでいろいろな考え方や物の見方に触れてください。

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