旧石器時代の人々は頑固者? 謎多き先史時代の人々の暮らし
文字のない時代
地球の歴史は、文字で書かれた記録が残る「歴史時代」よりも、文字のない時代=「先史時代」が多くを占めています。旧石器時代から縄文時代にかけて現生人類ホモサピエンスが現れますが、彼らがどのような地域で、どのような環境に適応しながら生活をしていたのかについても多くの謎が残されています。例えば石器の材料である頁(けつ)岩がとれる山形県の最上川流域では、後期旧石器時代から縄文時代にかけての遺跡が数多く見つかっています。そこで発掘調査を行い、人々がどのように石器を作り、使用していたのかを明らかにする研究が進められてます。
さまざまな調査手法
発掘では、遺跡から建物跡や土器、石器などが発見されます。日本の旧石器時代遺跡では当時の人間や動物の骨、植物といった有機物がほとんど残っておらず、石器を狩猟に用いたのか、それ以外に用いたのかの推定が困難です。しかし、例えば先端が損傷した石器が遺跡から出土した場合、この損傷を実験的に復元し、出土石器と照合することで、「槍先に取り付けて狩猟に使われていた」といったことが推測できます。また、「放射性炭素年代測定」という手法を用いて、当時のたき火跡で生じた炭から、その遺跡の年代を特定できます。これらの分析によって、「いつ」、「どんなことが行われたか」を理解できます。
環境への適応と変わらないスタイル
旧石器時代には、より良い環境を求めてシベリアからサハリン、北海道、本州へと移住してきた人たちがいました。移住の足取りに合わせて遺跡を調べて比較することで、彼らがいかに環境に適応してきたかがわかります。これまでの研究によって、移住によって周囲に生息する動植物の種類が変わっても、生活のスタイルは変えておらず、石器の作り方や使い方も維持されたことがわかっています。
旧石器時代の遺跡は日本だけで1万7千あるとされ、まだその一部しか詳しく調査されていません。こうした遺跡をさまざまな手法で調査し、ほかの時代・地域と比較することで、先史時代の謎は明らかになるのです。
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東北大学 文学部 日本学専攻(考古学) 教授 鹿又 喜隆 先生
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