北海道特有の美しい花の種子発芽に取り組む

北海道特有の美しい花の種子発芽に取り組む

発芽するのに1年から2年かかる種子

北海道には、まだまだ豊かな自然が残されています。ところが、北海道に特有の美しい花を咲かせる野生の植物の多くは、簡単には発芽しません。 例えばカタクリは、早春に花を咲かせて夏には地上部が枯れてしまう春植物といわれる生活様式を持つ植物ですが、初夏に種子が散布されてから、子葉が出てくるのはそれから一冬越した翌年4月のことです。また、オオウバユリというアイヌの人達がその球根を食べていた植物では、秋に散布された種子は、2回の冬を越した春、つまり約19カ月後にならないと子葉が出てきません。これらの種子は、散布される時期には胚が小さいため、発芽する前に胚が大きくなる必要があるのです。そして胚の成長と発芽のためには、何段階もの特別な温度が必要なので、発芽に時間がかかるのです。

発芽の研究の面白さ

カタクリやオオウバユリのほかにも、キバナノアマナやエゾエンゴサク、オオバナノエンレイソウなどの美しい野生の花が、北海道にはあります。一度どのような花なのか図鑑で見てみてください。それらは、すべて発芽に1年から2年もかかるのです。このような発芽することが難しい野生植物の種子発芽を研究することの面白さの一つは、その研究があまりやられていないので、新しい発見になることです。園芸用の花や野菜の多くは、まいた後比較的すぐに発芽するのですが、これらの種子ではそうはいきません。発芽するためにはどのような条件が必要なのか? なぜこの植物はこんなに時間をかけて発芽するのか? などを考えることが楽しさの一つです。

お花畑の回復と創造へ

もう一つの意味は、実用的な面から、北海道でも少なくなりつつあるこのような植物を守り、新しく創り出すことに役立つ情報であるということです。発芽というのは植物が生活を始める最初の重要な段階です。ですから、発芽のための条件をしっかりと確認しておくと、その植物がなくなってしまった場所に再生させ、新しい場所に群落(お花畑)を創り出そうとする時の重要な情報となるのです。

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先生情報 / 大学情報

北海道大学 農学部 生物資源科学科 教授 近藤 哲也 先生

北海道大学 農学部 生物資源科学科 教授 近藤 哲也 先生

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造園学、緑地学、園芸学

メッセージ

人生には紆余曲折があります。あなたが今、学びたいと思っていることも、3カ月後には変わっているかもしれません。むしろ、変わっていく方が自然ではないでしょうか。ですから、運やきっかけ、人との出会いを大切にしてください。追い詰められた時にがんばる、逆境をエネルギーにするように心がけてください。うまくいかないことがあってもそれをバネにしながら、誠実にまじめに物事へ取り組むことが必要です。そして、多少しんどくても進んで仕事を受ける。そうすれば、あなたの取り組みを評価してくれる人が現れるものです。

北海道大学に関心を持ったあなたは

北海道大学は、学士号を授与する日本最初の大学である札幌農学校として1876年に創設されました。初代教頭のクラーク博士が札幌を去る際に学生に残した、「Boys, be ambitious!」は、日本の若者によく知られた言葉で本学のモットーでもあります。また、140余年の歴史の中で教育研究の理念として、「フロンティア精神」、「国際性の涵養」、「全人教育」、「実学の重視」を掲げ、現在、国際的な教育研究の拠点を目指して教職員・学生が一丸となって努力しています。