2万数千年前に、シベリアと北海道の交流があった!
極寒の地・シベリアの現生人類
約20万年前にアフリカ大陸で生まれた「現生人類」(=現在の人類、ホモ・サピエンス・サピエンス)は、ユーラシア大陸を通って、4万年前には現在のシベリアにやってきたことがわかっています。ところが、約2万5000年前になると、シベリアから遺跡が消えているのです。そして、2万3000年前くらいになると再び遺跡が現れ、たくさんの遺跡が遺されています。2万5000年前から2万3000年前までの2000年間に、いったい何があったのでしょうか?
避難地としての北海道
実はこの2000年間は、地球上が最も寒くなった時期に一致しています。シベリアの大部分は極地砂漠、極地ツンドラの状態で、当時の人類の生活方法では居住し続けることができなかったのではないかという意見が有力です。おそらく、シベリアにいた人類は、極寒の期間、どこか温かい南の地に避難したのではないかと考えられています。彼らの避難先の1つとして浮上しているのが、北海道です。北海道には3万年前からの遺跡が残っていて、シベリアに遺跡がない時期にも、北海道には遺跡があることがわかっています。
狩猟技術の細石刃技術の伝播も
シベリアと北海道の交流の痕跡はそれだけではありません。2万3000年以降の気温の上昇で、シベリアに人類が戻ってくるのですが、このとき、それまで持っていなかった細石刃技術という狩猟技術が一緒に北上します。もしかすると、この技術は避難地であった北海道で生まれ、シベリアにもたらされたものかもしれません。現在、それについての検討が、具体的に進められているところです。
人類の行動と技術の移動は、遺跡の年代が以前よりもかなり細かく、数百年単位でできるようになってきたことで、はっきりと確認できるようになりました。こうした考古学などの研究が進むことで、アフリカ大陸から世界に拡散した人類が、現在の多様な文化をどのように形成していったのかについても、具体的に解明することができるようになるかもしれません。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 人文社会学部 人文学科 歴史学・高古学教室 准教授 出穂 雅実 先生
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