犯罪を抑止し、予防するための「犯罪心理学」
誰にでも犯罪者になる可能性がある
人は他者に対して、暴力や攻撃といった行動を起こすことがあります。中には相手を操作するための手段として意図的に攻撃する人もいますが、多くの場合、暴力をふるってしまう背景には、「強い怒りや恨み」が潜んでいます。なんらかのきっかけに反応し、「ついカーッとなって」衝動的に行動してしまうのです。きっかけがなければ攻撃することはなかったかもしれませんし、「そんなことをする人だとは思わなかった」という声もよく聞きます。犯罪者になる可能性は誰にでもある、ということです。
犯罪を「させない」社会的抑止力
怒りの感情から相手を殴りたいと思ったとき、人間には「手をあげてはいけない」と修正する能力がある、という仮説があります。これは個人の経験や社会環境から学習した結果が影響していると考えられています。たとえ修正能力が低くても、暴力という行動に移さない場合もあります。自分にとって大切な人を悲しませたくないという感情など、人とのしっかりとした絆(きずな)がストッパーになっているという、社会的絆理論の考え方です。
また、社会問題化している万引きは、店の経営に支障をきたす場合も多く、万引きをさせない環境づくりに地域で取り組む自治体も増えています。一人ひとりの自制心だけでは犯罪を止めるのが難しいことも多く、こうした社会的抑止力の重要性が指摘されています。
情報を発信し予防行動を促す
犯罪を完全になくすことは難しいということを前提に、犯罪に巻き込まれるリスクを下げる行動を取ることも大切です。特殊詐欺にひっかからないための効果的な情報発信の方法や、イヤホンをつけて夜道を歩くことを止めるための効果的な注意喚起の仕方など、犯罪心理学や社会心理学の観点からの、事業者や行政、警察などと連携した取り組みも進んでいます。
こうした情報を一番届けたいのは、自分は絶対に犯罪に巻き込まれないと思っている人です。しかし、こういう人ほど情報が届かないという傾向もあり、その解消も今後の大きな課題です。
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東北大学 文学部 准教授 荒井 崇史 先生
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