人類学に必要不可欠な、三つのアプローチ

人類学に必要不可欠な、三つのアプローチ

実際の現場で観察する

人類学では、人間の生活に関わるあらゆるものが研究対象になります。経済や法、宗教、テクノロジーといったテーマ、また最近の卒業論文の例をあげると、「スカート男子」、「ゾンビ映画」といったトピックさえも研究対象になり得ます。ただし人類学では、どんなトピックを研究する際にも共通した三つのアプローチ、つまり研究の方法があります。
第一の方法は、必ず現場に出かけて観察をするということです。例えば、「椅子」も十分人類学の研究対象になりますが、その椅子を自宅に持ち帰り、材質や座り心地を調べるのは、別の学問領域です。人類学の場合は、その椅子がもともとどの空間に置かれていて、人間がどのように使っているか、ほかの椅子との違いや位置関係はどうなっているかなど、椅子が置かれているコンテクスト(文脈)を観察します。このように現場に出かけて調査することを、「フィールドワーク」と言います。

「部分」を見て、「全体」を考える

第二に、「部分」を研究しながら「全体」を見るということです。例えば「スカート男子」について研究するなら、そこから社会全体を見てみるということです。その結果、スカートが女性と結びついている服飾文化を批判的に考えるきっかけになるかもしれません。さらに発展させ、人間とはどういう存在かを考えてみるのです。一つのトピックを大きな視野でとらえることが重要なのです。

「正しさ」は複数あることを認識する

第三に、研究対象が自分とは異なる文化・社会に属していても、自分も正しいし、相手も正しいと考えることです。正しさは複数あるという認識が、人類学を学ぶ上での基本的な前提となります。
こうしたアプローチに沿って、自分とは異なる文化や社会を研究しながら、自分が属する文化や社会と比較し、研究を進めていく手がかりにします。この「比較」がポイントです。異なる点=多様性を見るだけではなく、そこから人間に共通するもの=普遍性を模索することが、人類学では非常に重要な意味を持つのです。

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東京都立大学 人文社会学部 人間社会学科 准教授 石田 慎一郎 先生

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社会人類学

メッセージ

高校ではまず、高校生としての勉強をしっかりやって基礎学力を身につけておきましょう。大学で何を学ぶか悩む時期でもあると思いますが、学問とは想像以上に多様なものです。私自身、高校時代は、大学で日本史を学ぼうと決めていましたが、大学に入ってから、人類学の存在を知ったのです。そういう例もあるので、大学で何を学ぶのかを決めるのは入学後の楽しみにとっておくということでもいいと思います。現時点での関心を大切にしつつ、幅広い学びが可能な大学を選ぶとよいかもしれません。

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東京都立大学は「大都市における人間社会の理想像の追求」を使命とし、東京都が設置している公立の総合大学です。人文社会学部、法学部、経済経営学部、理学部、都市環境学部、システムデザイン学部、健康福祉学部の7学部23学科で広範な学問領域を網羅。学部、領域を越え自由に学ぶカリキュラムやインターンシップなどの特色あるプログラムや、各分野の高度な専門教育が、充実した環境の中で受けられます。