橋を守って社会の崩壊を防げ! 気象とコンクリートの劣化の関係は?

橋を守って社会の崩壊を防げ! 気象とコンクリートの劣化の関係は?

日本の橋が危ない!

日本国内にはたくさんの橋がありますが、その多くが劣化の問題にさらされています。国土交通省の点検で、早期あるいは緊急に措置を講ずべきとされる橋が多数あるとされています。迅速な対処が必要ですが、膨大な費用がかかるため、費用対効果を鑑みて、どういう方法を採るべきかの判断が必要です。ここで重要となるのが、一般化と個別化のバランスです。すべての橋に個別に対応すると多大な費用がかかり、かといって全国一律でよいわけでもありません。環境によって劣化の状況が異なるからです。

地域や部位によって異なる劣化の危険性

コンクリート橋の劣化の一番の原因は塩、次に水です。当然ながら海沿いにある橋が塩害を受けやすく、波や風の強さによって影響度が変わります。例えば同じ新潟県の海岸沿いでも、地域によって飛来する塩分の量は大きく異なります。さらに、実際の橋の塩の付着状況の調査により、部位による違いも大きいことがわかりました。雨量や季節変化も地域によってさまざまであり、橋の形状によっては水の通り道になりやすい箇所も生じます。橋の劣化のプロセスを明らかにするために、模型を使った実験やシミュレーションで研究が進められています。

社会の崩壊を防げ

橋の維持管理は数十年にわたります。いつ頃、どのように点検とメンテナンスを行うのがよいか、今後の社会の変化なども織り込んで、最善の方法を見つける必要があります。既存の橋の維持管理だけでなく、新しく造る橋の長寿命化も欠かせません。素材となるコンクリートの材料や作り方から橋の設計まで、さまざまなレベルで研究が行われています。
橋は生活と産業の両面で重要なインフラです。もしインフラが災害で一時的に限られた地域で機能しなくなっても、他地域からの援助を受けて、ある程度の期間で復旧できます。しかし、恒常的に広域で機能しなくなると、社会の崩壊につながります。橋を始めとするインフラ施設の設計や維持管理は、私たち全員に関係のある重要な研究テーマなのです。

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先生情報 / 大学情報

新潟大学 工学部 工学科 社会基盤工学プログラム 教授 佐伯 竜彦 先生

新潟大学 工学部 工学科 社会基盤工学プログラム 教授 佐伯 竜彦 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

土木工学、コンクリート工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

高校時代の勉強で無駄なことは一つもありません。理系志望でも、国語や社会をはじめとする文系の科目は大切です。特に工学的な研究では、社会のニーズをくみ取ってテーマを選んで進めていく必要があり、そこでは文系の学びが欠かせません。私の研究の例では、インフラの修繕の今後数十年間でかかる費用を見積もるときには金利も考慮する必要があり、金融の知識が必要になります。好き嫌いに関係なく、まんべんなく勉強しておきましょう。身につけたことは、どんな専門を選んでも決して無駄にはなりません。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

新潟大学に関心を持ったあなたは

新潟大学は教育面を最も重視し、学生が自らの専門を深く極めるばかりでなく、広い視野をもち、物事を総合的に判断する力を身につけること、及び実践と体験を通したきめ細かい教育を行うことによって、学生一人一人の個性を伸ばすことを目指しています。さらに、教養教育と専門教育を融合させた教育プログラムを提供し、特定の課題・分野の学習成果を認証したり、異なる学部の学生と教職員で構成されるグループが地域住民とのふれあいを通じて人間的成長を目指すなど、本学の理念である「自立と創生」に基づく学生育成を実践しています。